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もうピッキングは歩かない、探さない。棚が来てくれるから!

MonotaRO、無人搬送車(AGV)150台導入
もうピッキングは歩かない、探さない。棚が来てくれるから!

導入予定の棚ごと運ぶAGV(日立製作所製)

 MonotaROは来春稼働予定の関東物流拠点「笠間ディストリビューションセンター」(茨城県笠間市)で、無人搬送車(AGV)150台を導入する。運ぶのはパレットに載った荷物ではなく棚だ。データ指示によってAGVが目的の棚に移動。棚の下に入り込み、AGVテーブルが上昇し棚を持ち上げて運ぶ。歩かない、探さない―。ピッキング作業者は、デジタルピッキングの表示器に従い、棚から目的商品を取り出すだけとなる。

 工業用間接資材を皮切りに自動車整備業や工事業、厨房(ちゅうぼう)、農業、医療分野向けへと、商材のカテゴリーを拡大しているMonotaRO。現在1000万アイテムを扱い、自社在庫と仕入れ先からの直送を合わせた当日出荷品は44万アイテムにのぼる。鈴木雅哉社長は常に「カテゴリー拡大に終わりはない」と、限界を設けない姿勢だ。

 商材が増え、売れ筋商品の即納体制を整えるには、自社物流拠点のより効率的なオペレーションは欠かせない。茨城県の新センターは、最大で在庫能力50万アイテム、1日当たりの出荷能力4万件を計画している。平屋建て、延べ床面積5万6000平方メートルと広大な構内を、マーカーなしで自律走行するAGVが動き、人の動線は大幅に短縮できる見通しだ。従来の物流センターに比べ、生産性は約2倍に向上する見込みだ。当面、従来型の“人が歩く”ピッキングと混合方式だが、成果を見ながらAGVを追加導入するという。

 現在の主力物流拠点である尼崎ディストリビューションセンター(兵庫県尼崎市)は4階建てで、総距離3キロメートルの多層階搬送コンベヤーで構成。鈴木社長は「尼崎でAGVを導入する予定はない」とし、手法を使い分けている。背景には、建物の構造の違いもあるが雇用環境の問題もある。尼崎の拠点に比べ新拠点は周辺人口が少なく、安定した人材確保が課題となる。

 日本の生産年齢人口は減少する一方で、将来はさらに人材確保が難しくなりかねない。新物流センターでの試みは、将来を見据えた布石でもある。
(文=大阪・坂田弓子)
日刊工業新聞2016年11月2日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
棚ごと運ぶAGVであれば、今まで使っていた棚をそのまま活用できる倉庫も多そうなのでその分費用も抑えられます。導入のハードルを下げる要因の1つにもなります。

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