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監視カメラ、新技術で攻める三菱電機。AI導入で五輪需要取り込む

危険人物や要介護者など自動抽出
 三菱電機は2017年度以降に監視カメラシステムに人工知能(AI)技術を導入する。“灯油缶”“長い棒”といった危険物を持つ人や、サポートが必要な身体の不自由な人の画像を専用データで事前にAIに学習させ、自動でデータから特徴を抽出。監視カメラに同じ特徴を持つ人が映ると管理者へ知らせる。AIで検知システムの構築を効率化でき、防犯から顧客サービスまで要望に応じた幅広い映像利用が可能になる。東京五輪・パラリンピックに向け、監視カメラでの映像解析需要が急拡大すると見て開発を急ぐ。

 危険物を持つ人や身体の不自由な人などをリアルタイムに検知。必要に応じて支援する人が現場へ向かうことで、防犯や顧客サービスを向上する。駅のホームでふらつく人の転落防止などにも利用可能とみられる。技術の一部は、顧客との実証試験を始めた。

 従来の顔認証などでは、人が特徴点を設定するためシステム構築に時間がかかっていた。AI活用により、検知システム構築の効率化に加え、一つのシステムで防犯やマーケティングなど複数の用途の対象を検知できるため、システム全体のコストを低減できる。

 三菱電機は同技術のほか、NTTコミュニケーションズと連携し、1枚の記録画像を学習して似ている人を見つける技術を開発中。東京大学とは、シミュレーションと映像解析を組み合わせて、イベント会場への経路の混雑状況を予測する技術を開発した。

日刊工業新聞2016年10月31日



東大と新技術、混雑状況を高精度に予測


 三菱電機は18日、東京大学の西成活裕研究室と共同で、イベント会場への経路の混雑状況を高精度に予測できる技術を開発したと発表した。監視カメラ映像をリアルタイムに解析して人の流量を算出し、即時に将来の混雑を推定する。実際の混雑状況に対する予想精度は約80%と、過去の蓄積データを基に予測する従来手法に比べ30ポイント高めた。状況に応じた混雑解消策の立案や安全対策の実施に役立つ。数年内をめどに警備分野での実用化を目指す。

 三菱電機の画像解析技術と、東大西成研究室の混雑予測モデルを組み合わせ、現在の人の流量から混雑を即時に予想できる業界初の「高速群集移動シミュレーター」を開発した。10分後までの混雑予測ならば約80%の精度を出せる。

 イベント会場と最寄り駅などを結ぶ経路の警備業務などでの利用を想定する。事故など不測の事態が生じた場合でも、状況に即応して最適な回避経路を設定できるメリットもある。8月20日に東京都世田谷区で開かれる「世田谷区たまがわ花火大会」で7回目の実証試験を行う。

 近年、イベントの大型化が進み混雑リスクが高まっている。主催者にとっては警備コスト増も課題に浮上しており、安全性確保と警備の効率化の両方に役立つ技術が求められていた。過去からの蓄積データを基に混雑状況を予測する従来技術は、都市計画などの分野で利用されているが、予想精度に限界があり即応性が重要な警備分野では浸透していない。

日刊工業新聞2016年8月19日



NTTコムと協業、店舗で実証


 三菱電機とNTTコミュニケーションズ(NTTコム)は、監視カメラを使ったソリューション事業で協業する。三菱電機の監視カメラシステムに、NTTコムの映像解析技術やクラウドサービスを組み合わせて提供する。2016年度上期から小売店や金融関係の店舗で実証実験を開始し、実際のサービス提供を目指す。
 
 三菱電機は高性能な監視カメラに加えインフラ設備向け監視システムの構築ノウハウや光・無線通信技術などを有する。一方、NTTコムはクラウドサービスに加え人工知能(AI)による人間の動作検知など解析技術を持つ。これらの知見を組み合わせ多様なソリューションを提供する。

 近年、監視カメラは防犯だけでなく、マーケティングや設備の遠隔保守、見守り・介護支援など活用範囲が広がっている。こうした需要を意識し、両社で新たなビジネスを創出する。まず映像解析の実用性やシステムの最適化などを検討し、ソリューションのモデルを模索する。

日刊工業新聞2016年3月9日

日刊工業新聞2016年10月31日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
監視カメラといえばパナソニック、キヤノン、NECなどライバルも多い。比較的カスタム性の高い製品だが、プラットフォームビジネスとして昇降機やFAなど自社の他の強いアセットとうまく組み合わせていけないだろうか。

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