女性限定の賞は女性研究者活躍に有効?それとも逆差別?

 「女性限定の賞は女性活躍推進に有効か」「それでは逆差別になる上、価値の低い賞にならないか」。約90の自然科学系の学協会に横串を刺す「男女共同参画学協会連絡会」の10月8日のシンポジウムで、学会の女性賞についての分科会が注目された。研究者の業績は論文など比較的、客観的に評価できるが、そもそも工学系では女性研究者の比率が低いなど一筋縄ではいかない。学協会が分野の壁を越え、女性研究者の支援のあり方を探っている。

男女アンバランスの解決策、「女性賞」


 男女共同参画学協会連絡会は、学会賞受賞者についてアンケートし、45学会(回答率50%)の結果を速報した。複数の若手研究者を選ぶ「奨励賞」では全受賞者中、女性は10%で、女性会員の比率と女性受賞者の比率に正比例の傾向があった。しかし顕著な研究業績を対象とする「研究賞」では全受賞者中、女性は4%と狭き門だ。


 新領域の小規模学会は受賞者の女性比率が高い。しかし「大規模で伝統ある古い学会では、女性会員比率が10―20%でも、研究賞の受賞者がいないという傾向がある」と、とりまとめた北川尚美東北大学准教授は説明する。

 日本の研究者に占める女性の比率は人文社会系、企業勤務も合わせて15%。男女アンバランスを積極的に改善する一つの方策が、表彰対象を女性に絞った女性賞だ。実際に女性賞を持つ学会は、分野を問わない「日本女性科学者の会」を筆頭に六つある。日本生理学会の女性賞の場合、子どもがなく資産にこだわらない研究者夫婦の寄付を原資に、10年限定で走らせている。また日本農芸化学会は若手向け、企業向けと合わせて一気に三つの女性賞を、2017年に創設する計画で準備を進めている。

受賞が自信に


 各学会とも、創設の検討時には「通常の賞の選考に漏れ、別枠の賞をもらって本人はうれしいのか」「当初はともかく、適任の候補者が年を追うごとにいなくなるのでは」など否定的な意見が多数あったという。議論を経て認識されるようになってきた女性賞の意義は、大きく2点ある。一つは受賞の公表や受賞講演により、少数派で埋もれている女性研究者の“見える化”が進むこと。もう一つは研究奨励金などで受賞者が実質的な支援を得られることだ。

 日本化学会フェローである産業技術総合研究所の相馬芳枝名誉リサーチャーはさらに、「所属組織の外から評価され、何事にも勇気を持って取り組めるようになる」という受賞者の心理的なメリットを重視する。自身も44歳で「女性科学者に明るい未来をの会」の猿橋賞を受賞し、自信が持てたという。

 受賞後は、管理職への昇進、大型研究予算の獲得、学会の役員就任と活躍につながった。子育てなどで十分な研究時間を取れず、後ろめたさがある女性にとって、受賞は男性以上に強い励みになる。「女性向けでも何でも受賞は効果がある」(相馬名誉リサーチャー)。“女性”の区分けを積極的に活用することをアドバイスする。

受賞機に「女性活躍の役に立ちたい」


 日本動物学会会員の産総研の沓掛磨也子企画主幹は、博士研究員らを対象とした女性賞を30代で、その後に奨励賞を40代で受賞した。「学会に見守ってもらっている」という思いを持ったという。年長の研究者には「若手が業績を上げた後などよいタイミングで、賞の応募を後押しをしてあげてほしい」と要望。一方で「こんな人が受賞したんだと思われるように」と年少研究者の視線も意識している。

 研究者の仕事は孤独なものが多く、絶対数が少ない女性は“点在”状態だ。受賞を機に学会など研究コミュニティーにおける役割を意識するようになったという声は、いくつも聞かれた。「受賞前は自分の仕事、研究にしか関心がなかった。それが受賞により、女性活躍の役に立ちたいと目覚めた」(化学工学会会員の藤岡恵子ファンクショナル・フルイッド社長)という具合だ。

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日刊工業新聞2016年10月28日

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昆 梓紗

昆 梓紗
11月01日
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「女性賞」という言葉だけ聞くと、「逆差別」だけでなく、「そんなことされたくない」という女性自身の声も聞こえてきそうです。しかしそういった声が上がりながらも、賞を設ける必要性があるという状況をまず理解する必要があります。

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