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「ノート ハイブリッドEV」は日産の国内販売・生産を救うか

ゴーン社長「37・2kmは同じ車格で燃費が一番よい」
「ノート ハイブリッドEV」は日産の国内販売・生産を救うか

eパワー搭載「ノート」とゴーン社長

 日産自動車は24日、追浜工場(神奈川県横須賀市)で、新たな駆動方式「eパワー」を搭載した小型車「ノート」のオフライン式を行った。新型ノートは11月2日に発表する。カルロス・ゴーン社長は式典後、記者団に対しノートの燃費が「1リットル当たり37・2キロメートルとなり同じ車格で一番高い」と明らかにした。

 現行ノートは日産自動車九州(福岡県苅田町)で生産しているが、改良に伴い追浜工場に移管した。式典でゴーン社長は「追浜がノートの生産を獲得できたのは、競争力を強化してきたたゆまぬ努力のたまものだ」と従業員をねぎらった。

 eパワーはガソリンエンジンで発電した電気でモーターを回して駆動する技術。ゴーン社長は「ノートは軽快な走りと燃費効率を実現する。国内生産と販売に大きく寄与するだろう」とも述べ、新型ノートの投入による国内販売増への期待を示した。新型ノートの詳細は11月2日に発表する。

日刊工業新聞2016年10月25日



三つの転換点を考える


 日産自動車が今秋にも主力小型車「ノート」に電気自動車(EV)仕様を追加する。ノートEVの投入からは、日産の三つの転換点が読み取れる。追浜工場(神奈川県横須賀市)の稼働率向上、基幹部品である電池調達の最適化、国内の小型車販売の建て直しだ。

 ノートEVはガソリン車と合わせ追浜工場で作る。国内最量販クラスのノートの生産は、追浜にとって待望の大口案件となる。

 日産は2012年までの超円高下に生産の海外シフトを進め、国内生産は低コスト体質を整えた九州工場(福岡県苅田町)にシフト。このあおりで追浜の生産が落ち込んだ。

 先代ノートも追浜で生産していたが、12年の全面改良時に九州に移管。同時に追浜は2本あるラインの1本を休止した。生産技術や人材を生み出す”マザー工場“としての役割を強めた一方で、稼働率は改善せず13年度の生産実績は能力の5割の12万台に終わった。14年度以降も低迷が続く。

 再びノートを追浜で生産するのは今春から九州で北米向けSUVを生産するため。九州はフル稼働が続き、ノートの移管で空いた能力をSUV増産に充て米国需要に対応する考えだ。ノートは月産1万台の計画。16年度内に7―8万台の生産が確保できる。国内事業の悩みの種だった追浜低稼働問題はひとまず改善の道筋が見えた。

 日産は量産EVの駆動用電池を初めて外部調達する。ノートEVの駆動用リチウムイオン電池にパナソニック製を選んだ。日産はEVの電池をコア技術と位置づけ、NECとの共同出資会社からの調達か内製にこだわっていた。

 だが競合電池メーカーの低コスト攻勢を受け「外部との競争の中で最適なものを採用する」(カルロスゴーン社長)と方針転換。その手始めが今回となる。商品競争力の向上につながる調達の最適化が、基幹部品で進んだ意義は大きい。

 ノートEV投入は日産の国内販売にとっても肝になりそう。「国内では確固たる2位が目標」(幹部)だが、ここ数年4―5位圏で落ち着いてしまっている。鬼門は小型車。国内の小型車市場はトヨタ自動車のHV「アクア」やホンダの「フィット」など競争が激しい。スズキも小型車を強化し始めた。1車種当たりの販売量も多く、小型車攻略が国内販売の明暗を分ける。

 エコカー戦略でEVに傾斜した日産はHVの車種展開が手薄になった。現行ノートは「スーパーチャージャー」という別の環境技術を採用して低燃費を打ち出した。ガソリン車の中ではヒットしたが、HVに競り負けている感は否めない。

 今回、「レンジエクステンダー付きEV」という新技術を武器に、仕切り直しで激戦区に挑む。新技術が新たな市場を生めば日産としては競争を優位に運べる可能性がある。ノートEVは国内販売の流れを変える起点となるかもしれない。
(文=池田勝敏)

日刊工業新聞2016年1月8日

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
電気自動車の普及が進まず、今のところエコカー戦略で出遅れしている日産。まずベースの「ノート」が魅力的なブランドだったか?という疑問符が付いてしまう。「三方よし」を、消費者は前向きに捉えるか、中途半端と捉えるか。

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