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「神風号」に始まり今ではエアバスにも装備品を供給する実力企業

横河電機、コックピットのディスプレーからや燃料関連の計器まで
「神風号」に始まり今ではエアバスにも装備品を供給する実力企業

横河電機のフラットパネルディスプレー

**仏タレスと取引関係20年
 「航空機産業は年率4―5%のペースで成長すると言われており、我々のビジネスも拡大を見込める」。横河電機の西村稔執行役員航空宇宙・特機事業部長は期待を寄せる。

 プラント設備の制御システムで存在感が強い同社だが、フランスの大手航空電子機器メーカーであるタレス・アビオニクスと20年以上にわたる取引関係を築いている。コックピットのフラットパネルディスプレーをシンガポールで製造し、同社が組み立てて欧エアバスに供給。航空機「A350XWB」に搭載されている。

 西村執行役員は「反射の抑制やバックライトの明るさなどにノウハウが詰め込まれている。市販のパソコンのディスプレーとは見え方が全く異なる」と説明する。

 航空機産業のすそ野が広がるのに伴ってコスト低減の必要性が高まるものの、横河電機にとっては競合相手が限られるという。振動や気圧の変化も踏まえたフラットパネルディスプレーの供給量が増える可能性は大きい。2018年3月期までの3カ年の中期経営計画の戦略として、航空機事業での利益拡大を目指している。

グループ会社も一貫生産


 また、グループ会社の横河電子機器(東京都渋谷区)も航空機産業の開拓に動いている。振動や衝撃への耐久性が不可欠なエンジン用点火装置をはじめ、燃料制御用機器、センサーなどを設計から検証、生産まで一貫して対応する体制を整えている。

 西村執行役員は「さまざまなメーカーと商談を進めている。メーカーにメリットを感じ取ってもらえるかが重要」と厳しい競争を見据える。突破口を見いだすのはこれからが本番だ。

 横河電機は防衛省向けにも同ディスプレーや燃料関連の計器などを納入している。制御システムを中心としたビジネスモデルを確立しているが、成長性の高い航空機産業のニーズを取り込む重要性が増している。タレスとの太いパイプも生かしながら、航空機事業の競争力を高めることが求められる。

横河電機の企業メモ


 横河電機の航空機事業は80年以上にわたり、30年代前半に航空計器市場に参入したことで始まった。遠距離の国産高速偵察機「神風号」に、エンジン関連の磁石発電機と点火栓が搭載されていたという。このほかにも高度計や速度計なども戦時中に生産していた。こうした歴史が現在のビジネスモデルの礎といえそうだ。
(文=孝志勇輔)
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日刊工業新聞2016年10月17日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
「神風号」とは、正確には朝日新聞社が陸軍の偵察機を買い取って訪欧飛行に使った機体の愛称です。日本には、このように戦前から航空機産業に関わってきた会社も多くあります。

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