「地域」ならではの起業家支援は成功するか

大阪で動き出すエコシステム

 大阪市のベンチャー支援が軌道に乗り始めた。創業期のベンチャー企業を勉強会や交流会などを通じて支援する「シードアクセラレーションプログラム」の第1期生となる起業家10人が4カ月間のスケジュールを終え、6社が資金調達に成功するなど大きな成果をみせた。11月には第2期がスタートする。中小企業の町である大阪から、ますます多くのベンチャー企業が飛び立つことが期待される。

 「マスコミへの露出が増え、テレビ番組の出演で話題になり、月間販売台数が3倍になった」と、あっと(大阪市中央区)の武野團社長は喜ぶ。同社は健康状態をチェックする毛細血管血流観測装置「血管美人」を手がける。プログラムの最大の成果について「普通なら会えないベンチャーキャピタリストから助言をもらい、ネットワークが広がった」と武野社長は話す。

 同プログラムでは大企業や投資家、各種専門家など約70人がメンター役となり、ベンチャー起業家へ専門的なアドバイスなどで支援する。大阪市が2013年4月、ベンチャーキャピタリストや銀行、起業家などさまざまな人が出会い、支援を受け、大きく育つ場として大阪駅近くに開設した拠点「おおさかイノベーションハブ」を主な活動の場とする。

 腰痛患者にオンラインで最適な対策の提案や優良治療院の紹介を行うサービス「ポケットセラピスト」を展開するバックテック(京都市下京区)の福谷直人社長は「10人程度だったユーザーが4カ月で約20倍の200人になった」と振り返る。効果的な広報によって新聞や雑誌などメディアへの露出も増えた。資金調達面では、サイバーエージェント・ベンチャーズ(東京都渋谷区)との第三者割当増資の契約も進み、動画コンテンツの追加や新しいアプリ開発に励む。

 プロのワンポイントアドバイスで野球やゴルフの上達を目指すアプリ「スポとも」を開発しただんきち(大阪府摂津市)は、ABCドリームベンチャーズ(大阪市福島区)から約2000万円を資金調達したほか、「事業提携に向けてネットワークが広がった」(与島大樹社長)という。現在水面下で進んでいる提携の話もあるといい、「自分たちの成長がプログラムへの一番の恩返し」(同)と意気揚々だ。

 首都圏に比べ関西にはベンチャーキャピタリストの数も圧倒的に少ないのが課題だが、同様の取り組みは大阪府や神戸市、京都市でも始まった。今回のプログラムで資金調達に成功した6社の、出資と借り入れを含めた総額は2億600万円。大阪市の吉村洋文市長は「わずか4カ月で2億円以上のお金が動いたのは大きな成果。2期3期と続け、大阪発イノベーションの創出と、起業家が新たな起業家を育てるエコシステムを目指したい」と意気込みをみせる。
(文=大阪・大原佑美子)

前田 亮斗

前田 亮斗
10月21日
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海外でも自治体とVC・アクセラレーターが組んでアクセラレーションプログラムが数多く存在するが、アクセラレーションプログラムはビジネスモデルのブラッシュアップ等の直接的支援とネットワークをつなぐ間接的支援の両方のベンチャー支援が一体となって行える仕組み。大阪市だけでなく、例えば東京都も表参道でアクセラレーションプログラムを実施しているが、農業や医療、シビックテック等、個別のインダストリーやテーマに特化したものであれば、地方都市ならではのアクセラレーションプログラムが機能するのではないかと思う。

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