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「地銀苦境」でメガバンクや専門金融機関との連携広がる

プロジェクトファイナンスや事業承継などでノウハウ共有
 専門領域を持つ銀行や大手銀行が地方銀行にプロジェクトファイナンス(事業融資)のノウハウの提供や、事業承継を橋渡しする動きが出てきた。本業の貸し出しは低金利で利ざやが縮小しており、地銀にとって新たな収益源の確立が課題になっているからだ。銀行間で収益性を高めるため、これまでと異なる連携が今後広がりそうだ。

 東京スター銀行ではプロジェクトファイナンスなどのシンジケートローンを他の地銀と共同で組成したり、助言したりする取り組みを始めた。「案件はあるが自行単独では対応できないと相談されるケースが増えてきた」(法人金融部門投資銀行部)とし、既にメガソーラー関連など5件程度の案件が持ち込まれているという。

 プロジェクトファイナンスには目利きも必要なため、一部の地銀を除き対応できる人材を抱えていない。東京スター銀も地銀だが、メガバンクや外資系銀行出身者が多く、投資銀行業務を手がけてきた。東京スター銀は支援を通じて、自行の顧客以外の案件に参画でき、地銀はノウハウの不足を補える。

 りそな銀行は地方銀行と事業承継の情報共有を広めている。大都市圏で買い手になる企業と後継者不足に悩む地方の企業を地銀と連携して、橋渡しする。約2年前から地銀と顧客の紹介などで業務提携しており、現在は30行以上と協力関係にある。

 地銀を取り巻く環境は厳しい。全国地方銀行協会の中西勝則会長(静岡銀行頭取)はマイナス金利政策が長期にわたり続きそうな中、「付加価値の創出を地道にやらなくてはいけない」と語るが、容易ではない。

 単独で収益の底上げが難しい地銀の中には他行と協力することで、ノウハウの取り込みや顧客網を広げる機運が高まる。「3メガバンクは同じ地域に支店もあり、競合関係にある。相談しづらい」(地銀関係者)との声もある。

日刊工業新聞2016年10月19日
安東泰志
安東泰志 Ando Yasushi ニューホライズンキャピタル 会長
地銀とメガの連携も悪くはないが、むしろ、エクイティを活用した事業再生や再編、プロジェクトファイナンスを進める中で融資機会やノウハウを得るというやり方もある。たとえばPEファンドとの連携が極めて有効であることは疑いがない。

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