北越紀州製紙がCNFをサンプル供給へ。親水性を克服し「A3判」の加工に対応

製紙業界、“究極の紙"では負けられない

 北越紀州製紙は次世代のバイオマス素材として注目されるセルロースナノファイバー(CNF)について、年内にもガラス繊維シート(不織布)との複合体およびエアロゲル(多孔体)の2形態でサンプル供給を始める。研究所でA3判(297ミリ×420ミリメートル)までのシート材加工と親指大のエアロゲルを作製できる体制を整えた。17日に静岡県富士市のふじさんめっせで開かれる「第2回CNFサンプル企業展示会」(日刊工業新聞社など後援)で初公開する。

 CNFは木質繊維(パルプ)を処理してナノメートルサイズ(ナノは10億分の1)まで細かく解きほぐしたもの。セルロースミクロフィブリルと呼ばれる最小単位の繊維素は直径が髪の毛の1万分の1、3ナノ―4ナノメートルしかない。鉄鋼に比べ5分の1の低比重(1立方センチメートル当たり1・5グラム)で同等の曲げ強度と、5―8倍の引っ張り強度を備える。樹脂やゴムの補強材(複合材)として大きな期待を集めている。

 ただ、CNFは親水性が高いため扱いにくく、製紙大手などが始めたサンプル供給は水の中に1―2%分散させたゲル状や、添加剤を混ぜた粉粒体が中心。親水性がネックとなって、複合材の用途開発も遅れているのが実態だ。

 こうした状況を踏まえ、北越紀州はエアフィルター濾材に使われる自社製品のガラス繊維シートとCNFを複合化。ガラス繊維の隙間にCNFをクモの巣状に張り巡らし、ナノサイズまで捕集性能を高めた。「従来、はがき大のシートまでしか加工(複合化)できなかったが、A3判に対応したことでフィルターユニットに取り付けた実証試験が可能になる」(根本純司北越紀州製紙研究所主任研究員)としている。

 一方、比表面積が極めて大きくなるCNFエアロゲルは超高性能の断熱材や触媒の担持体、吸着材への利用を想定。分散媒として水に親水性のアルコールを混ぜ、乾燥時のCNF凝集を防いでスポンジ状のエアロゲルを作製する。

日刊工業新聞2016年10月14日

明 豊

明 豊
10月14日
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すでに製紙業界ではCNFの量産化に向けた動きが活発になっている。中越パルプ工業は3月末、川内工場(鹿児島県薩摩川内市)にCNFの量産設備「第1期商業プラント」を建設すると発表。ポリプロピレン複合材の開発に成功している。王子ホールディングスは化粧品にも使われている安全な薬品であるリン酸による化学処理でCNFを製造する方法を確立。実証試験を始め、化粧品原料にする用途開発も進めている。三菱化学と共同でCNFの透明連続シート製造に成功。大型ディスプレーや太陽電池などへの応用も想定。日本製紙は昨年、抗菌・消臭効果のある銀などの金属イオンを大量に担持させた大人用紙おむつも商品化した。17年から島根県で食品・化粧品向けにCNFを量産する。自社でのCNF実用化以前に200社超にサンプルを提供している。

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