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廃線を食い止めろ!物流大手とバス会社の“客貨混載”は成功するか

ヤマトや佐川が地方で取り組み拡大。鉄道との連携も
 電車やバスなど公共交通機関に旅客だけでなく貨物も載せる「客貨混載」が広がりをみせている。ヤマト運輸は北海道の路線バス事業者3社と連携し、座席の一部を荷台スペースにして荷物を運ぶサービスを始めた。地方自治体でも地元の農産物を載せて販路拡大を図るなど、同様の取り組みが広がっている。地方の公共交通機関は、過疎化や高齢化で利用者が減少し赤字路線が拡大。客貨混載は路線の廃止を食い止め、輸送を効率化できるといった、運行事業者と物流会社双方にとって一石二鳥の仕組みとなっている。

 ヤマト運輸は2015年6月に岩手県の岩手県北自動車(盛岡市)、宮崎県の宮崎交通(宮崎市)と連携し、路線バスを生かした客貨混載を実施している。岩手では、車両後方の座席を減らして荷台スペースを確保し、専用ボックスを搭載した専用車両を導入。配達は近くの宅急便センターからターミナルとなるバス停留所に荷物を運んで路線バスに積み、地域のセールスドライバーに引き渡す。バス路線網とヤマトの配送ネットワークを効率よく結び、輸送している。

 佐川急便は新潟県の北越急行(南魚沼市)と連携し、鉄道を生かした客貨混載を実施している。北越急行のうらがわら―六日町間を鉄道で運び、佐川は両駅と近くの営業所をトラックで結ぶ。ヤマトも京都の京福電気鉄道と連携し、路面電車を活用して同様の客貨混載を実施している。

集荷の締め切りが2時間延びたケースも


 物流会社に加え、自治体でも客貨混載が始まっている。茨城県の常陸太田市は、道の駅ひたちおおた―バスタ新宿間の高速バスのトランクを活用し、市内の農家が生産する農産物を週2回、中野区の商店などに輸送する。荷物を中野区役所まで運び、各店舗が受け取りに来る仕組みだ。

 客貨混載は空きスペースの効率的な活用だけでなく、運行事業者の新たな収入源を確保できることが大きなメリットとなる。収益性が低く赤字路線を抱える地方の運行事業者にとっては、路線維持に直結する。

 物流会社にとっても配送ルートの効率化は経営の生命線。ヤマトの宮崎の客貨混載では、集荷の締め切り時間が2時間ほど延びた。物流業界ではトラックのドライバー不足も深刻となっており、複数の方法を組み合わせた輸送は、今後も拡大しそうだ。
(文=高屋優理)
日刊工業新聞2016年10月4日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
いろいろ課題もあるしそんな単純に収益改善とはいかないかもしれないが、こんなシェアリングはとてもよい試み。

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