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在宅オペレーターは地方創生の切り札?―コールセンターに潜入してみた(後編)

個人情報の取扱の問題がネックに
 「統計はないが、コールセンターで働いている人は国内で60万ー100万人と見られている。今後もコールセンター需要が大きく減ることはない。むしろ(オペレーターの職は)可能性を秘めている」米アバイアの日本法人の川村有吾コンタクトセンターソリューション・スペシャリストは指摘する。

 同社は日本国内の100席以上の大規模コールセンター市場の占有率(構内交換装置)ベース)で2014年度は約5割、業種を通信販売に限れば、8割にも達する。
 
 足元のコールセンター需要は旺盛だ。通信販売各社はインターネットでの取り扱いも始めているが、いまだに8-9割が電話経由が占める。保険など金融商品もダイレクト系は電話からネットに契約形態は移行するが、「契約はネットでするにしても、直前まで電話で細かく質問するお客さまが多い。電話対応は重要だ」(生保幹部)。

 自動車保険などを取り扱うダイレクト損保の中には電話受注によるオペレーター数を増やす企業もある。「価格競争から抜け出すために質の底上げは急務」(ダイレクト損保首脳)だからだ。

 課題になるのが、人口減少下でのオペレーターの確保だ。ジュピターショップチャンネルの水野緑オペレーション部長は「質を重視しており、誰でも良いというわけではない。平均年齢は上がっている」と指摘する。

 オペレーターには主婦も多いが、夫の転勤や家族の転居で、育成した重要な戦力がやめざるをえない場合も少なくない。こうした中、切り札になりそうなのが在宅オペレーターだ。

 アバイアの川村コンタクトセンターソリューション・スペシャリストは「在宅で対応するにしても、必要な設備はほとんど要らない。導入費用を踏まえても企業のコストはむしろ安くなる。在宅対応は米国などでは当たり前の光景になっている」と語る。

 オペレーター業務は勤務時間内の繁閑差が大きい。とはいえ、企業側はオペレーターを定時間、拘束しなければならず、オフィスの賃料や人件費のコスト負担は大きい。在宅シフトが進めば、コールセンターのスペースは小さくなり、拘束時間も減る。オペレーター側も通勤時間が不要になり、柔軟な勤務が可能になる。

 ただ、日本国内の大型コールセンターで過半のシェアを握るアバイアの取引先で在宅を取り入れているのはジュピーターショップチャンネルを含め2社にとどまる。導入が進まない背景にあるのが個人情報の取扱の問題だ。
 「(セキュリティーを含めて)在宅オペレーションは技術的に全く問題ない。ただ、日本の場合、企業はリスクに目がいきがち」という。

 川村スペシャリストは「在宅ならば、居住地は関係なくなる。地方での在宅勤務が進めば雇用の拡大にもなり、地方創生にもつながる」と語る。
 コールセンターは現状でも大きな雇用口になっているが、更なる可能性を秘めている。経営者のデメリットよりもメリットを重視する判断がコールセンターを変えるカギを握っている。
(おわり)

「1分で25万円売る」コールセンターに潜入してみた(前編)こちら
※ 最終回掲載が予告日(5月12日)から遅れましたことをお詫びします。
ニュースイッチオリジナル
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
「日本の場合、企業はリスクに目がいきがち」という言葉が印象的でした。

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