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ジャパンディスプレイがスマホ向け液晶増産。危機はしのげるか

惑う有機ELへの投資。18年モデル「アイフォーン」は再び液晶に?
ジャパンディスプレイがスマホ向け液晶増産。危機はしのげるか

JDIのスマホ用液晶と本間CEO

 ジャパンディスプレイ(JDI)が、スマートフォン向け液晶パネルを増産する。米アップル、中国スマホメーカーからの受注が急増しているためだ。足元のJDIの資金繰りは厳しいが、受注を捌き切れれば状況は改善する。JDIの真の課題は中長期の戦略をどう描くかにある。有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)パネルの量産に乗り出すのか、それとも優位性のある液晶パネルを進化させるのか-。その経営判断はJDIの命運を左右する。

 アップルのスマホ「iPhone(アイフォーン)」向け液晶パネルなどを手がけるJDIの茂原工場(千葉県茂原市)と能美工場(石川県能美市)は、高水準の稼働を続けている。茂原工場を巡っては「(12月に閉鎖予定の4・5世代の)古い生産ラインまで活用して増産を急いでいる」(業界関係者)。

「7」好調でアップルが要請


 理由は大きく2つある。一つ目は、アップルからの受注増だ。同社は9月に新型の「アイフォーン7」を発売した。一つ前の「アイフォーン6S」は16年に入り販売が低迷したため、アップルはアイフォーン7の初期生産数を慎重に見極めていた。しかし、その低めの見積もりの割りには、日米市場などで販売が好調な滑り出しを見せており、JDIなど一部サプライヤーに対し増産を要請した模様だ。

 もう一つの理由は中国スマホを巡る受注動向の変化。スマホ世界3位のファーウェイは、技術志向が強くディスプレーにも高機能パネルを採用するが、「サプライヤーの1社が品質問題を起こし、パネルが足りなくなった」(パネル製造装置メーカー幹部)。このため、すでにファーウェイの主力サプライヤーとして取引実績のあるJDIに受注が流れたようだ。

 またファーウェイに次ぐ世界4位のOPPO(オッポ)からの受注も伸びている。OPPOはディスプレーに有機ELパネルを全面採用する戦略で韓国サムスン電子と取引していたが、「サムスンからの供給が滞った」(同)という。このため方針を転換し、JDIに液晶パネルを発注したという。

今でも「足元の資金繰りは相当厳しい」


 「アイフォーン6S」の販売低迷の影響を受け、JDIは2016年3月期に2期連続の最終赤字に沈んだ。16年4-6月期も業績不振は続き、5月末には一時的に運転資金が不足する状況に陥った。今でも「足元の資金繰りは相当厳しい」(業界関係者)が、足元の旺盛な受注を捌き切れれば、数ヶ月後には手元流動性にもある程度余裕ができそうだ。

有機ELの対応に苦慮


 ただ今後もJDIの経営の舵取りの難しさは変わらない。最大の課題は有機ELパネルとどう向き合っていくかにある。
 
 有機ELパネルは15年冬にアップルがアイフォーンに採用する意向を示してから脚光を浴びた。同パネルで先行するサムスンや、同じ韓国メのLGディスプレイが巨額の設備投資を決め、日本の素材・材料メーカーも増産や研究開発強化を打ち出した。
 
 JDI、台湾・鴻海精密工業傘下となったシャープも18年以降に量産に乗り出す意向を示した。直近の計画としてJDIは茂原工場に約500億円を投じて試作ラインを17年春に稼働させ、シャープも堺工場(堺市堺区)などに574億円を投じて試作ラインを整備し、2018年4-6月に稼働させる方針を掲げる。

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ニュースイッチオリジナル
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
先日は世耕経産大臣が売却の可能性を示唆するなど身辺がにわかに慌ただしくなってきたJDI。足元では液晶の需要が相当高いようだ。しかも有機EL狂騒曲の中で、液晶への揺り戻しもあるという指摘。今後の大きなポイントは革新機構の出口戦略とアップルの意向だろう。

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