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なかなか消えない“ファインバブル経済”のカギは食にあり?

方丈記の泡からナノの泡へ
 鴨長明は方丈記で「淀(よど)みに浮(うか)ぶうたかたはかつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」と世の無常を書いた。うたかたとは泡のこと。

 泡は主に液体中に気体が含まれ表面張力で丸くなったものを指す。「あぶく」などの表現もあり、はかなく消えやすいものの意で用いられてきた。選挙のたびに現れる泡沫(ほうまつ)候補という言葉もある。

 だが今は消えない泡の存在が注目を集めている。直径100マイクロメートル(マイクロは100万分の1)以下の微細な泡を指すファインバブルだ。さらに小さい直径100ナノメートル(ナノは10億分の1)以下はウルトラファインバブルと呼ぶ。いずれも、長期間液中にとどまるのが特徴だ。

 ファインバブルは小さいがために液面に浮上せず、壊れにくい。負の電荷を帯び、液中の他の物質を吸着、除去する洗浄、殺菌効果がある。実際にNEXCO西日本は関連会社で超微細気泡生成装置を開発し、高速道路のトイレや橋の洗浄に活用している。洗浄のほかにも農産物や魚の生育促進などで活用が進められている。

 バブルといえば大きく膨らみ程なく消えたバブル経済が思い浮かぶ。たとえ小さくともなかなか消えないファインバブル経済なら、待ち望む向きも多いだろう。
2016年9月28日
土田智憲
土田智憲 Tsuchida Tomonori かねひろ
トップレベルのバーテンダーはシェーカーでマイクロバブル(直径50ミクロン以下)を作り出すことができ、それにより風味が高まり、舌触りもふんわりするという。また、レストラン界のアカデミー賞と呼ばれる「世界のベスト・レストラン50」で5度、一位にランクされた伝説的レストラン「エル・ブジ」の料理長フェラン・アドリアさんは、全ての食材を泡状にして、食材の香りをできる限り残す「エスプーマ」という調理法・調理器具を編み出し注目された。食に目がない僕は、やはりこういう記事を読むと、このウルトラファインバブルを料理に使った時にどんなものになるのか、とても気になる。調べてみたところ、ウルトラファインバブルを用いると、水に不溶性の香りを付与することができるようになるようだ。水溶性の味に変化を与えてしまう溶液ではなく、香りを含んだ泡を付与することで、新たな風味を生み出すことが可能になるかもしれない。

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