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JAXAが開発、険しい悪路を突破する四脚クローラーロボットの実力

<動画付>インフラ保守や災害調査用のほか宇宙の天体観測にも
JAXAが開発、険しい悪路を突破する四脚クローラーロボットの実力

4脚クローラー型ロボ(JAXA提供)

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)研究開発部門第二研究ユニットの妻木俊道主任研究開発員らは、大きな岩やがれきを乗り越えられる4脚クローラー型ロボットを開発した。各脚をそれぞれ制御しなくても、脚が地形に合わせて動く。ラジコン感覚で操縦できるため操作者を選ばない。インフラ保守や災害調査用に提案し、2年内の実用化を目指す。

 4本脚の接地部分にクローラーを採用し、脚の関節にサスペンションを内蔵した。脚がバネのように働いて段差を吸収する。岩には動物が前足で取り付くようにして登る。クローラーはモーターに流す電流値だけで制御しており、高度な制御ソフトは要らない。

 機体の長さに対して40%以上の高さの障害物を超えられる。同じクローラー式の戦車は約15%だった。実験で45度の斜面を登れることを確認した。移動速度は毎秒60センチメートルで、5キログラム以上の機器を搭載できる。

 前後進や旋回などラジコンと同じ感覚で操縦できる。今後、ゼネコンなどと連携し、山林の植生調査やがれきの散乱する建屋での復旧活動など用途開拓を進める。通信遅延が大きいため複雑な制御プログラムの送受信が難しい宇宙の天体観測にも利用できる。

日刊工業新聞2016年9月27日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
火星などの天体表面のロボットを操縦する場合、通信遅延が大きいため複雑な操縦プログラムをやりとりするのは難しいです。経路上の「この段差には前脚を置いて、そのときのクローラー回転力はいくつで」、などと複雑な指示はしません。壊れると直せないので、制御もメカもできるだけ単純化するのが宇宙ロボの開発指針になります。これは宇宙ロボを地上で使う際にもメリットがでます。単純化していくと遠隔操縦も簡単になります。人を選ばず、工事など入れ替わりが多い現場でも運用しやすくなります。 (日刊工業新聞科学技術部・小寺貴之)

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