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「衝突はマイナスではない」-。日米の文化の違いをプラスに変えた「NSX」

開発責任者が語るホンダ流新時代のクルマ作り
「衝突はマイナスではない」-。日米の文化の違いをプラスに変えた「NSX」

NSXとホンダの八郷社長

**ホンダR&Dアメリカズ・エグゼクティブエンジニア テッド・クラウス氏
 日米合同チームで開発した。問題の解決にどうアプローチするかで文化的な違いがあるから、いつかは衝突するのではという感じはあった。でもマイナスではない。違いがあるからこそ議論していてわくわくした。米国だけのチームだったらハイブリッド型のパワートレーンは思いつかなかったかもしれない。逆に日本だけでは、複合素材で構成する骨格は実現しなかったかもしれない。合同チームだからこそ総合的に性能を高められた。

 三つのモーターを搭載したハイブリッドシステムは、応答性が高く意のままのハンドリングを実現している。業界初となるアルミ接合部品などを採用した骨格は、コンパクトなサイズを維持したまま軽量で高い剛性と衝突安全性を持つボディーを実現した。

 開発中の2012年、エンジンを当初計画の横置きから縦置きにするという抜本的な変更をした。不況のあおりで消費者の嗜好(しこう)が変わった。性能への要求も変わった。偉大なものができなければプロジェクトは継続しないというのが当初からの決まりだった。馬力を計画より100以上上げつつ安定性を保ったり、外装も再デザインしたりした。発売は遅れたが、望みの性能を追求した。

 初代NSXとは1990年のデトロイトショーで出会い、機能的な美しさに魅了された。スポーツカーはこうあるべきだというホンダの主張を感じた。その9カ月後に米国のホンダに入社した。以降、動的性能とハンドリングの視点から車開発に携わり、ホンダのモノづくりの思想を学んだ。

 その学びは新型NSXの開発責任者に任命されて開発の方向性を定めるのに大いに役立った。「人を中心としたスーパースポーツ」という初代NSXのコンセプトを継承しつつ、最先端の技術を盛り込んで、新時代のスーパースポーツを体験できる仕上がりにできた。

【記者の目・米国ホンダの成長見える】
 日米合同チームで開発したが、開発責任者に米国ホンダのクラウス氏が任命されたことや、米国で生産を行うことからプロジェクトの主体は米国側にあった。初代NSXは日本生まれだった。初代NSXが生まれてからの四半世紀で、米国ホンダが最高峰の車づくりを担えるほど力をつけたことが分かる。
(文=池田勝敏)
<仕様>
全長×全幅×全高=4490×1940×1215mm
車両重量=1780kg
乗車定員=2人
エンジン=水冷V型6気筒縦置き「JNC」
総排気量=3.492リットル
モーター=交流同期電動機「H2」「H3
最高出力=エンジン507馬力、モーター後48馬力、
同前37馬力
変速機=9速DCT
JC08モード燃費=1リットル当たり12.4km
価格=2370万円(消費税込み)

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日刊工業新聞2016年9月26日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
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