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オリンパスが顕微鏡の“聖地”で内視鏡部品を生産するワケ

高い加工技術を医療分野で生かす。長野から世界展開後押し
オリンパスが顕微鏡の“聖地”で内視鏡部品を生産するワケ

医療機器の部品加工を始める長野オリンパス(長野県辰野町)

 オリンパスは長野県内にある顕微鏡などの生産拠点で、医療用内視鏡の部品加工を始めた。同社は成長戦略の柱に「医療事業の拡大」を掲げており、生産拠点拡充もその一環として実施する。「早期診断」「低侵襲治療」のニーズが高まる中、需要が堅調な医療用内視鏡の安定供給につなげ、世界市場での拡販を後押しする。

 長野オリンパス(長野県辰野町)で製造を始めたのは内視鏡先端部のレンズや金属加工部品、プラスチック部品などの医療用内視鏡部品。内視鏡の性能を左右する高い加工技術が求められる部品だ。

 長野は国内シェア60%の生物用顕微鏡などを手がける科学事業の主力生産拠点。医療用内視鏡は会津(福島県会津若松市)、白河(同西郷村)、青森(青森県黒石市)の東北3拠点で製造している。

 オリンパスは2021年3月期までの中期経営計画で、医療事業の売上高を16年3月期比47・8%増の9000億円に伸ばす目標を掲げる。東北3拠点の増強も進めるが、事業の拡大には生産余力の確保が不可欠となる。

 長野には部品加工を担える素地がある。顕微鏡の“心臓部”である「対物レンズ」。ナノレベル(ナノは10億分の1)の面精度で磨かれたレンズが十数枚入り、モノづくりに求められる高い技術力と高精度を実現する優れた技能を兼ね備える。

 元々、カメラや顕微鏡などを手がける事業会社が統合して発足した長野オリンパスは、既存事業にとらわれない幅広い知識や技術があり、新規事業を取り入れる風土もある。

 医療用内視鏡の修理事業も伊那事業所(長野県伊那市)で始めており、災害が発生しても稼働を止めない体制を構築している。

 長野オリンパスは顕微鏡の国産化を目指し操業した拠点であり、70年以上がたった今も創業者の思いが根付く。長野オリンパスの田中健寛社長は「高い技能、幅広い技術を医療分野に生かす」と意気込む。医療機器にも思いを引き継いでいく。

日刊工業新聞2016年9月15日
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
長野オリンパスは今年、日本能率協会のグッドファクトリー賞を受賞した。授賞理由が「3工場統合という混乱から、長野モデルというマネジメントサイクルを構築し、全員力の構築→挑戦的な目標→個の能力向上を行い高付加価値工場への道筋をつけ、成果を生んでいること」。モノづくりに込める気概を感じる。

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