食糧からフリマアプリまで。三井物産のM&A、7つの攻め筋

前期は創業初の赤字も、優良資産の取得で利益成長に手応え

 三井物産は2020年までの中期経営計画として、「攻め筋」の確立、「既存事業」の収益基盤強化と「パイプライン案件」の完遂、裏打ちのある「新規事業」への投資と「株式還元」の両立を目指している。

 投資セグメントは鉄鋼製品、金属資源、機械・インフラ、化学品、エネルギー、生活産業、次世代・機能推進の7事業に分けることができる。16年3月期のセグメントごとの当期利益は金属資源(63億円)、金属資源(-1625億円)、機械・インフラ(183億円)、化学品(177億円)、エネルギー(-39億円)、生活産業(-140億円)、次世代・機能推進(161億円)となる。

 当期損益は834億円の損失となり、発足以来初の赤字転落となった。これは中国景気の減少に伴う資源安の影響が大きく、特に金属資源分野に力を入れてきた三井物産はこの影響を大きく受け、3500億円の減損処理をすることとなった。

 多くの商社も石油やLNGなどのエネルギー資源、鉄鉱石などの金属資源の開発事業に参画したため、11年以降の資源価格の下落とともに事業の撤退や評価損の計上に踏み切っている。

 三井物産は今回の市況下においても着実にキャッシュを生み出している事業と認識するとともに、今回のような短期的なサイクルに左右されることなくポートフォリオのさらなる強化行うとのこと。資源開発は、開発着手から生産・販売までを含め、20~30年の長期にわたる事業であるためとの認識のようだ。

 今後は、同社が強みと認識する「利益積み上げ型」事業の拡大に注力する戦略だ。キーワードとして、ハイドロカーボンチェーン、モビリティ、インフラ、メディカル・ヘルスケアの部門があり、これらはさらなる拡大を図る。最近の同社のM&Aはインフラ関連の出資が目立つ。権益などの獲得により「利益積み上げ型」を実践している最中なのであろう。

直近の三井物産のM&A実績


2015.9 住友林業とともに、中国の北京金隅股份有限公司傘下である北京金隅装飾工程有限公司の第三者割当増資を引き受けて出資参画。20%の株式を取得
2015.10 チリ大手サーモン養殖・加工・販売事業会社であるMultiexport Foods S.Aの子会社Salmones Multiexport S.A.の第三者割当増資を引き受け、出資参画。23.4%を約121億円で取得
2015.10 エス・エム・エスと共同で、アジア・オセアニア地域で医薬情報サービス事業を展開するMIMSグループを共同で買収するため、同グループの持株会社であるMedica Asia (Holdco) Limited全株式の譲渡契約をAXIO Data Hedgeco Limitedおよび個人株主6名と締結。三井物産の出資比率は40%で、約120億円で取得
2015.10 米国三井物産を通じて、米国の非遺伝子組換え穀物を専門とする集荷会社Bluegrass Farms of Ohio, Inc(売上高3400万ドル)に出資参画。株式の50%を取得
2015.10 ブラジル国内19 州の地域ガス配給事業会社を保有するPetrobras GásS.Aの株式49%を約19億レアル(670億円)にて取得

2015.11 持分法適用関連会社であるSanta Vitória Açúcar e Álcool Ltda社の全出資持分である株式50%を、米国化学品大手のザ ダウ ケミカル カンパニーに約2億ドルで売却
2015.11 豪エネルギー大手Santos Limitedが保有する豪ヴィクトリア州キッパーガス・コンデンセート田35%権益を約450億円にて取得
2015.11 ブラジルで都市旅客鉄道事業を手掛ける100%子会社ガラナアーバンモビリティの株式49.9%を、西日本旅客鉄道と海外交通・都市開発事業支援機構に譲渡

2015.12 日立製作所と日立製作所のインドにおけるグループ統括会社であるHitachi India Pvt. Ltd.と現地の鉄道車両製造・エンジニアリング企業の4社で信号通信設備及び施工を約280億円で受注。また、三井物産、日立製作所、日立インドの3社で自動列車制御システムおよび施工を約110億円で受注
2015.12 三井石油開発株式会社と共同で設立した投資子会社Mitsui E&P Brasil Ltda.を通じ、英国BG Group傘下のBG E&P Brasil Ltda.がブラジル北部沖合バヘイリーニャス盆地に保有する深海探鉱鉱区群(4鉱区)権益の10%を取得する
2015.12 メキシコの鉱山機械販売・サービス会社Road Machinery Co., S.A. de C.V.社の株式60%をコマツ子会社へ譲渡

2016.1 オマーンにおける発電事業への出資参画
2016.1 せとうちホールディングスと傘下の米国小型航空機メーカーであるQuest Aircraft Company, L.L.C.の第三者割当増資を引き受けて1000万ドルを出資し、12.5%の株式を取得
2016.1 三井物産がマレーシアに設立した100%投資子会社3B Power Sdn Bhd株式の50%を、中国電力に売却

2016.2 英国伝統校St.Albans Schoolのインターナショナルスクール運営事業に資本参画。同社の株を最大20%まで取得予定
2016.2 多様な分散エネルギーリソースを群制御する米国のソフトウェアサービス会社であるSunverge Energy, Inc.に出資
2016.2 オセアニア・アジア・北米において植林アセットマネジメント事業を展開するNew Forests Pty Limitedに出資参画(出資比率22.5%)する

2016.3 ノルウェーのオスロ証券取引所上場企業で樹脂ライナー製炭素繊維強化圧力タンク製造販売事業を行うHexagon Composites ASA(売上高1651百万ノルウェークローネ、約220億円)に25%出資参画する。
2016.3 スマホ向けフリマアプリ「メルカリ」の企画・開発・運営を行うメルカリの第三者割当増資を引受ける。第三者割当増資約84億円のうち、三井物産はリードインベスターの1社としての出資となる。
2016.3 100%出資子会社 Mitsui E&P Australia Pty Ltd を通じSantos Limitedと15年11月6日に締結した権益売買契約書(同年11月9日適時開示)の先行要件充足により、16年3月3日、豪ヴィクトリア州キッパーガス・コンデンセート田35%権益取得

2016.3 韓国証券取引所上場企業であるHankuk Carbon Co., Ltd.(売上約250億円)と炭素繊維などの複合材料加工事業分野で包括的な業務提携契約を締結。同社へ約28億円を出資し、株式10%を取得
2016.3 東南アジアの化学品販売大手のBehn Meyerと、シンガポールに投資会社BMM Venture を設立することで合意。新設会社の株式49%を取得予定
2016.4 産業向けIoT/M2Mデータ管理ソフトウェアの開発・販売において、グローバルリーディング企業である米国のOSIsoft, LLC.に出資参画
2016.5 日本曹達と共同で出資する米国の家畜飼料添加物メーカー、Novus International, Inc.が実施する増資を全額引き受け(三井物産:日本曹達=8:2)
2016.5 国内食肉業界最大手の一角を占めるスターゼンが実施する第三者割当増資を引き受け、持ち株比率を16.39%へ(約48億円



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M&A Online編集部2016年09月06日

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石塚 辰八

石塚 辰八
09月08日
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商社に試練の時が訪れています。その原因は昨年から続いている資源安です。これまで商社と言えば資源ビジネスが主力のイメージでしたが、それだけに、ここのところの中国経済の減速とイランの石油増産の影響をもろに受けたかっこうです。業界のトップを走る三菱商事、三井物産がそうでした。
ただ、非資源で強い伊藤忠は逆に絶好調で、好対照を見せました。資源関連はこれからもっと荒っぽい動きになるかもしれず、いち早く収益構造を転換した商社が覇権を握ることになる、ということでしょう。

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