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新日本監査、役員の人事評価改定で業務不適格者が20%にまで増える

東芝の不適切会計問題で顧客離れも進む。ガバナンス改革の成果どこまで
 新日本有限責任監査法人は、一般企業の役員に相当する「パートナー」への2016年6月期の人事評価で、業務不適格とみなす低評価者の割合を全体の20%近くとしたもようだ。同法人は、東芝の不適切会計問題以降、内部改善を進めている。低評価者の割合は15年6月期は数%だったが、評価基準を改めて厳格に運用した結果、大幅増となった。17年6月末のパートナーの退職者数も、例年より大幅に増えそうだ。

 監査法人のパートナーとは一般企業の役員のようなもの。出資者であり経営者でもあるため、例え業務不適格とみられる人材でも退職勧奨することが難しい。新日本は、業務に不適格なパートナーに改善を求めるひとつの手段として2月に人事評価制度を改め、今回は改定後初の評価となる。

 人事評価は5段階。下位の2段階が業務不適格と見なされる。評価基準は収益貢献ではなく、監査品質に重点が置かれており「品質評価が2なら、どれだけ収益を上げても総合評価は2以上にならない」(新日本有限責任監査法人)仕組み。

 従来も同様の評価制度はあったが、厳格に運用されていなかった。今期から、総合評価が高ければ年俸が大幅に上がり、低ければ大幅に下がるなど、報酬面でも違いを明確化。低評価を受けたパートナーは、改善に向けた指導を受けることになる。

 新日本は、業務体制・組織風土の改善を目指し、さまざまな改革を進めている。社外ガバナンス委員会を設置しガバナンスの透明化・向上を図っているほか、監査業務に関する社員ローテーションも見直した。

 東京大学と協力し、人工知能(AI)を活用した将来の不正会計予測システムも導入。さらに評価制度を通じパートナーの改善を促すことで、改革は加速しそうだ。

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
新日本は行政処分後に約40社の顧客が契約を解除したという。20%が多い少ないというより、今後、新しい仕組みをどう機能させていくかだ。これは新日本に限った話ではない。「真の顧客は投資家」であり、企業経営陣とのなれ合いという風土をどう変えていけるかは業界全体、あるいは資本主義を維持していく国際的な課題でもある。監査業界の寡占の構図に風穴を開けることも必要かもしれない。

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