ニュースイッチ

大西卓哉in国際宇宙ステーション 日本人飛行士からの実験レポート

「マランゴニ対流」、半導体・医療向け応用に期待
大西卓哉in国際宇宙ステーション 日本人飛行士からの実験レポート

ISSに滞在中の大西宇宙飛行士(JAXA/NASA提供)

 皆さん、こんにちは。JAXA宇宙飛行士の大西卓哉です。現在、私はISSにおいて、約4カ月間の長期滞在中です。ISSでは、さまざまな実験や日々のメンテナンス作業など、とても忙しい毎日を送っています。

 少しでも宇宙実験を身近に感じてもらいたく、実際のISSでの実験に関する作業や出来事、他の作業員(クルー)とのかかわりをはじめ、宇宙での実験が皆さんの暮らしや産業にどのように役立っていくのかなどをお話ししたいと思います。

 ISSの日本実験棟「きぼう」では、生命科学実験、たんぱく質の結晶生成実験、材料曝露(ばくろ)実験など、多岐にわたる実験を行っています。その中でも今回は「マランゴニ対流実験」を紹介したいと思います。

なぜ、この実験を選んで紹介したのか


 マランゴニ対流というのは聞き慣れない言葉ですが、いったいどのような現象なのでしょうか。かくいう私も、2009年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)へ入社するまで聞いたことがありませんでした。

 JAXA筑波宇宙センター(茨城県つくば市)での基礎訓練中、宇宙実験の一つであるマランゴニ対流実験について、研究者であり実験のとりまとめ役であるJAXAの松本聡さんから訓練を受けました。そこでマランゴニ対流によって起こる物理現象をいくつかビデオで見たのですが、どれもこれもそれまで見たこともない不思議な現象でした。

 マランゴニ対流とは、濃度や温度に勾配がある環境下で表面張力によって生じる対流です。しかし、地上では表面張力よりもはるかに重力が強く作用しており、マランゴニ対流の様子を詳しく観察することは容易ではありません。

 ところが国際宇宙ステーション(ISS)では微小重力環境が保たれているので、水が球体になって漂うように、表面張力の力が大きく影響します。そのため、マランゴニ対流を観察する上でISSはうってつけの環境と言えるわけです。

 宇宙飛行士候補者として米航空宇宙局(NASA)で訓練を開始した際にも、宇宙飛行士室の定例ミーティングでNASAの飛行士を前にマランゴニ対流実験の説明を行ったことがあります。

なぜ、この実験を選んで紹介したのか。

(ISSの日本実験棟「きぼう」で作業する大西宇宙飛行士=JAXA/NASA提供)
<続きは日刊工業新聞電子版に会員登録して頂くとお読みになれます>
日刊工業新聞2016年8月30日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
大西飛行士が宇宙から日刊工業新聞向けにレポートを送ってくれました。ぜひ全文をご覧下さい。

編集部のおすすめ