ニュースイッチ

トヨタのプロが教える“ダントツ品質活動” 確実に成果がでる8つのステップ

「設計不良は完成車検査ではほとんど発見できない」(野村氏)
トヨタのプロが教える“ダントツ品質活動” 確実に成果がでる8つのステップ

野村氏

 ―出版のきっかけは。
 「2006年に豊田自動織機のフォークリフトなどを手がける産業車両部門の品質アドバイザーに就任し、以降約9年間にわたって国内外工場や仕入れ先の品質改善を手取り足取り指導した。指導する際、取り組むステップごとに対策方法をA3判の紙1枚にまとめて配った。9年間でしたためた枚数は300枚に上る。生徒からは『野村メソッド』などと呼んでもらっていて、ある時から一冊にまとめてほしいという声が出てきた。豊田織機からも教科書となる本をつくってほしいと要請があった。この本は9年間をかけて取り組んだ『ダントツ品質活動』をまとめたものだ」

 ―出身のトヨタ自動車での経験がベースにあるようですね。
 「私は旧トヨタ自動車販売、いわゆる自販出身だが、1982年の工販合併を機に元町工場(愛知県豊田市)勤務となりトヨタ生産方式(TPS)を学んだ。その後、オーストラリアや南アフリカの工場で品質改善指導を行い実績をあげた」

 ―不良対策は「八つのステップ」で確実に成果が出ると言い切っています。
 「八つのステップとは(1)不良現認(2)在庫選別(3)原因追求(4)対策実施(5)朝市報告(6)標準化・横展(7)教育・訓練(8)日常管理。(1)―(5)は多くの会社でできているが(6)―(8)ができていない。製造品質については、八つのステップを徹底すれば必ず結果は出る。豊田織機高浜工場(愛知県高浜市)では完成車検査不良件数は98%減。海外工場でも軒並み90%以上減った」

 ―品質不良をなくしたいと思っている製造業に対して訴えたいことは。
 「不良が減れば、いわばドブへ捨てているお金が戻ってくることになる。まずは5年ぐらいのスパンで不良件数の推移を出し現状を見ること。右肩下がり以外の会社は、この本を読んでトップが号令をかけ真正面から対策に取り組んでほしい」

 「ただ品質は絶対にすぐにはよくならない。人、モノ、設備、方法という『4M』すべてが完璧でないと不良は発生する。豊田織機の例でもそうだが結果が出るまでには3―5年はかかる。品質改善に近道はない。階段を一つずつ上がるように地道な取り組みを愚直に続けるしかない」

 ―本の後半では設計品質についても盛り込んでいますね。
 「私はトヨタ時代からずっと製造不良対策に取り組んできたが、豊田織機に行き品質保証部の立場で見るようになってはじめて分かったことがある。設計不良は完成車不良検査ではほとんど発見できない」

 「設計プロセスを通過した不具合は直接顧客に届いてしまうということだ。それは八つのステップでは減らせない。設計プロセスを見える化し不良の発生源の特定と、それをどこで止めるのかという関所の設定が必要となる」

 「設計不良は、それを発見するタイミングの違いで対策に要する時間が大きく異なってくる。製品設計段階で発見できればベストで1時間―1日で対策は完了する。しかし市場クレームとなってしまえば収束するまで1―3年はかかる。より上流のタイミングで手を打てる仕組みをつくることが、いかに重要かということだ」
(文=名古屋・伊藤研二)
※著書『トヨタ式ダントツ品質活動』(発行=日刊工業新聞社)
【略歴】
野村貞郎氏(のむら・さだお)65年(昭40)富山大工卒、同年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。トヨタの海外工場で計13年、品質改善指導に従事。02年テクノエイト社長。06年豊田自動織機産業車両部門シニアアドバイザー。石川県出身。73歳。
日刊工業新聞2016年8月29日「著者登場」より
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
まさにトヨタの品質改善のプロ中のプロの言葉、参考になります。「設計不良は完成車不良検査ではほとんど発見できない」というのは少し驚きでもあり、納得の部分も。

編集部のおすすめ