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インドネシアの租税特赦が自動車販売を2割押し上げる!?

300万台のポテンシャル市場へ日系メーカーがMPVで攻勢
 インドネシアのタックス・アムネスティ(租税特赦)が自動車業界全体の販売を20%押し上げる可能性がある。ブルームバーグの報道によると、ホンダのインドネシア部門が、この措置を活用するインドネシア人の海外資産が国内に還流し、高額商品の購入に向かうと見込まれるため、と説明している。

 ホンダ・プロスペクト・モーターのセールス・マーケティング責任者、ジョンフィス・ファンディ氏は、インドネシア国際オートショーで行われたインタビューで、「インドネシアの自動車保有率は比較的低く、メーカーが販売を増やす余地が十分にある」と指摘。「タックス・アムネスティ・プログラムが成功すれば、来年は最大20%増加する可能性がある」としている。

 タックス・アムネスティは、未申告の海外資産を2017年3月までに報告する人への課税を減免する措置。インドネシア中央銀行はこれによって最大560兆ルピア(約4兆3000億円)の海外資産が国内に還流すると試算している。人口2億5600万人のインドネシアはホンダにとって米国と中国に次ぐ3位の海外市場。

 2016年1―6月期のインドネシアにおける自動車販売台数は53万1929台となり、昨年同期の52万5491台から1.2%増加した。東南アジア諸国連合(ASEAN)市場でのシェアは34.7%だった。ASEAN全体の自動車販売台数は152万台となり、昨年同期の148万台から増加している。2位のタイと3位のマレーシアはともに減少したが、4位のフィリピンは13万1465台から16万7481台へ、5位のベトナムは9万1790台から12万3632台へと増加した。

 ホンダはインドネシア自動車市場でトヨタ自動車に次ぐ2位に付けており、1―6月期の販売は35%増加。17年に販売20%増が実現すれば、12年以来の大幅な伸びとなる。

 日系メーカー各社とも特に多目的車(MPV)に力を入れている」。ダイハツ工業は同国専用の新型MPV「シグラ」を発売。2013年発売の同国専用小型車「アイラ」と共通のプラットフォームを改良した。エンジンは東南アジア向け1・2リットル新型NRエンジンと、燃費性能や出力を改善した1・0リットルKRエンジンの2タイプを設定。価格は日本円換算で約87万円から。月間2000―3000台の販売を狙っている。

 5ドア7人乗りのコンパクトMPVで、同国エコカー政策適合車。日本の軽自動車で培った室内空間を最大限活用する技術・ノウハウを応用した。現地ニーズの大人7人が快適に座れる居住空間と、多くの荷物が積める荷物収納スペースを確保している。トヨタにもOEM(相手先ブランド生産)供給し、同社は「カリヤ」の名前で発売する。

 また三菱自動車は2017年10月からインドネシアで建設を進める新工場で開発中のMPVの生産をはじめる計画。同国ではこれまで小型商用車中心の展開だったが、新型車の投入などで乗用車事業を強化する。

 三菱自は同国西ジャワ州で17年4月の生産開始に向け新工場の立ち上げ準備を進める。新工場ではスポーツ多目的車(SUV)「パジェロスポーツ」に次いで小型MPV、小型商用車「コルトL300」などの生産を計画。年産能力は16万台を見込む。新工場の投資額は約600億円。小型MPVは現地生産だけでなく、部品の現地化も進めて競争力を引き上げる。
中西孝樹
中西孝樹 Nakanishi Takaki ナカニシ自動車産業リサーチ 代表
インドネシアの自動車市場の着実な回復の手ごたえを感じている。経済は健全に転じ、インフラ投資へお金が回り始めている。更に、この記事のタックスアムネスティの効果である。海外資産がインドネシアに還流し、国内プロジェクトへ投資が活発化する期待がある。数十億ドル規模の税収が期待されているようだ。そこにトヨタ/ダイハツの新型MPV「カリヤ/シグラ」が投入される効果は大きい。新中間層の自動車保有に弾みがつき、都市部を中心に自動車需要は大きく成長が期待できる。資源に依存する地方経済の好転につながれば、まずは200万台市場に向けた飛躍が期待できると考える。将来的に300万台市場のポテンシャルも有するだろう。

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