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超高齢社会で「虚弱」と向き合う。歯と口の機能を保つために

深刻化する「オーラル・フレイル」。誰かと一緒に楽しく食事をする大切さ
 「フレイル」という言葉をお聞きになられたことがあるでしょうか。「フレイル」とは「虚弱」を意味し、健康と病気の中間を指す言葉です。人間が年齢を重ねていくことで段々と生じる、筋力の衰えや活力の低下、疲れやすさなどのことで、フレイルにはいくつかの種類があります。

 その症状や進行過程から、フィジカル=身体の虚弱、メンタル=精神心理の虚弱、ソーシャル=社会性の虚弱とに分類されて、それぞれが関係性を有していると言われています。

 例えば、体力や筋力の衰えは、外出などの活動性の低下を招く恐れがあります。そして、この活動性の低下により、人と接する機会が減少するかもしれません。それは、話す・考える機会を減らして、ひいては、判断力や認知機能の低下を招いてしまうかもしれません。

 こうした中、着目されているのが「オーラル・フレイル(歯・口の機能の虚弱)」と「食べる」という行為の関連性です。食環境の悪化から始まる栄養不足や筋肉減少は、最終的には生活機能障害に至るとされており、さまざまなフレイルの元凶とも呼ぶことができます。

 また、食べるという行為を維持し、向上させることはとても有効だという研究結果も示されています。誰かと一緒に楽しく食事をするというアプローチが、介護にとって、今後ますます重要になってくると考えられます。

 私どもの法人は「介護旅行」という取り組みを行っています。これは「閉じこもりがちな高齢者が旅行にいけるようになったらどんなに喜んでくれるだろうか?」というリハビリスタッフの思いから始まりました。

 2006年に横浜中華街や「ズーラシア」を巡る1泊2日の旅行を実施したのを皮切りに、その後も温泉地と観光地などをセットにして、年に数回の頻度で実施しています。

 参加者全員で歩き、食事をし、お風呂に入り、宿泊する介護旅行は、フレイルの予防や改善効果が期待できるだけでなく、高齢者の生きがい創出にも役立っています。そして何より嬉しいのは、参加者の笑顔が職員のやりがいにもつながっていることです。

 最後に、東京都病院協会と東京都医師会では、地域医療と介護の連携、地域包括ケアシステム、多職種協働などを進めており、その中でフレイルに対しても積極的な取り組みを行っていきたいと考えています。
(文=安藤高朗 医療法人社団永生会理事長)
日刊工業新聞2016年8月5日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
うちの父方と祖母は100歳近くまで生きた。母方の祖母は93歳でまだ存命である。二人の共通項はとにかくよく食べる。年をととっても肉や鰻を好んで食べていた。「肉食系・老人」を増やしていかねば。

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