ニュースイッチ

魚をふんわり包む“雪”―空輸時に鮮度保つ

魚をふんわり包む“雪”―空輸時に鮮度保つ

日通が拡販を目指す「sea snow」

 日本通運は塩水を凍らせた雪状の氷で魚の鮮度を保つ「sea snow(シースノー)」を利用した、航空便による水産物の輸送を拡大する。シースノーはマーズカンパニー(群馬県高崎市、松井寿秀社長、027・386・9111)が開発した冷媒。水道水に食塩を混ぜた塩分濃度3・5%の人工海水を冷却し、マイナス1度Cに凍らせた雪状の氷。マイナス1度Cを48時間維持することができるため、翌日の航空便による輸送も可能になる。香港とシンガポール向けのテスト輸送を経て、現在、米国向けの輸送で展開中。順次展開国を増やす。

 魚の輸送における冷媒は、一般的に水氷が使用されているが、時間の経過とともに氷が溶けて温度が変化するほか、氷で魚に傷が付くことがあった。

 シースノーは雪状で柔らかいため、緩衝材となり魚に傷が付かない。また、温度もマイナス1度Cを48時間維持できるため、荷物が到着した後も冷却効果がある。

 現状、シースノーを製氷するコストは水氷の1・5倍。だが、翌日の航空便の利用で割引運賃を適用するなど、トータルの輸送コストを抑えることで利用拡大を目指す。日本通運では今後、製氷機を成田など、航空貨物の拠点や配送先の海外の拠点にも整備し、輸送商品として拡販する方針だ。

 政府は生鮮食品の輸出拡大を成長戦略の柱に位置づけており、年々輸出量は増えている。日本通運は水産物の品質を維持できる輸送商品の開発で、生鮮品の物流需要を取り込む。
日刊工業新聞2016年7月29日 建設・エネルギー・生活1面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
空輸の発達により、さまざまな地域の新鮮な水産物をおいしく食べられるようになりました。和食ブームが続く海外にも本当のおいしさを届けられるようになります。

編集部のおすすめ