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今年1ー6月の倒産件数は減ったが、中国リスクが高まっている!

関連倒産は前年同期比5割増。アパレル産業の件数は過去最高に
 2016年上期の企業倒産は4114件発生し、前年同期(4400件)を6・5%下回り、7年連続の前年同期比減となった。業種別では、15年下期から公共工事の減少が続いたことで建設業が7年ぶりに増加に転じたものの、生鮮食料品やインバウンド効果など市場環境が改善した食品関連の倒産が大きく減少し、全体の倒産件数を押し下げる一因となった。

 負債総額は前年同期比21・3%減の7677億9600万円。負債100億円以上の倒産は新電力大手の日本ロジテック協同組合(負債162億8200万円、4月)、宅地造成・分譲のエンタープライズ自由ケ丘(同152億円、1月)など7件にとどまったことで負債総額が抑えられ00年以降で最小となった。

 一方、中国関連事業を手がけ、中国固有のリスクが要因となって倒産した「チャイナリスク関連倒産」は59件判明し、同51・3%増となった。中でも、繊維工業、繊維製品製造業などを含むアパレル関連産業が26件(構成比44・1%)を占め、14年の集計開始以降で最高を記録。中国での人件費高騰や為替変動、現地子会社や中国取引先企業の業績動向など、各種リスク要因が日本企業に与える影響が今後も懸念される。

 今後は、マクロ経済では熊本地震からの復旧・復興、マイナス金利政策の効果が住宅投資や設備投資に波及するとみられる。また、消費税率の引き上げ延期により駆け込み需要が期待できず、個人消費の基盤となる所得の上昇が一段とカギを握る。EU離脱問題も企業業績に下振れ要因として働くとみられる。

 米国の利上げ先延ばしや新興国や資源国の低迷も円高要因となり、企業を取り巻く経営環境は厳しさを増している。倒産動向は減少傾向にあり低水準で推移しているが、国内外で負のショックが相次いでおり、減少幅は縮小する可能性がある。

(文=帝国データバンク情報部)
※毎週火曜日に日刊工業新聞で「倒産学」を連載中
日刊工業新聞2016年7月26日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
倒産件数そのものよりも内容。中国でいえば産業構造の転換ではじき出される産業、企業を注視しなければいけない。さらに欧州景気が落ち込めば中国に影響が及ぶのは必至で、グローバル経済は一層不安定になる。投資マネーがどう動くか。訪れるかもしれない「超円高」倒産が来年以降、増えるシナリオも考えられる。

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