ニュースイッチ

野球選手を科学で分析、能力はどこまで進化するのか

投球時のケガの原因や、より遠くへ打球を飛ばす理論を研究
野球選手を科学で分析、能力はどこまで進化するのか

投球動作を観測(早稲田大学スポーツ科学学術院提供)

 スポーツ選手の能力はどこまで進化するのか―。早稲田大学スポーツ科学学術院の矢内利政教授らは、2020年東京五輪・パラリンピックで追加種目として復帰する可能性が高い野球について、投手の投球時のケガの原因や、打者がより遠くへ打球を飛ばす理論を研究している。

(骨の動きを分析する=早稲田大学スポーツ科学学術院提供)

 矢内教授らは骨格の運動を捉えるセンサー「電磁ゴニオメーター」を、投手の利き腕の前腕や上腕、肩甲骨などに装着して動きを分析。腕をしならせた状態では肩関節に負担がかかっていないと13年に突き止めた。それまで、投手が投球時に腕をしならせる運動が肩を故障する原因の一つと考えられていた。

 成果は、大学や社会人、プロ野球の投手のケガの予防に生かされている。投球動作の分析によって各投手ごとの投球時のケガのリスクを評価し、結果を投手やコーチ、トレーナーに伝えている。

 ただ投球過多などによる慢性的なケガの原因はまだ全面的には明らかになっていない。「今後はスポーツ整形外科医師などと情報交換し、投球時のケガのメカニズムの全容を解明したい」(矢内教授)。

 打撃では右打者がライト方向に、左打者がレフト方向にボールを打つ打法「流し打ち」について研究を進めている。打者の打撃動作を3次元ビデオカメラで撮影して分析。右打者がボールを打つ際、バットのボールが当たる面がレフト方向を向いていてもライト方向に打球を打てることを明らかにした。

 それまで、バットの向きと打球の方向は一致していると考えられていた。今後は意図した方向への打球の飛距離を伸ばす打撃理論を研究する考えだ。

 野球は92年のスペイン・バルセロナ大会で正式競技として採用。これまで日本は5大会で銀メダル1個、銅メダル2個を獲得した。矢内教授らの研究が進めばケガでプレーできなくなる選手の減少や、効率よく打球を遠くへ飛ばす打撃理論の発見などが期待できる。悲願の金メダル獲得へ、科学技術が野球日本代表「侍ジャパン」を支えるカギになるかもしれない。
日刊工業新聞2016年7月21日 
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ケガが減っていくと、選手の現役寿命がどんどん長くなりそう。いずれ還暦プロ野球選手とか登場するかも。

編集部のおすすめ