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変わりゆく「シーテック」の風景。今年はベンチャー出展が倍増の100社に

家電からIoTの見本市に定着するか
変わりゆく「シーテック」の風景。今年はベンチャー出展が倍増の100社に

2012年にシーテックの会場で談笑するソニーの平井社長(左)とパナソニックの津賀社長

 10月4日に開幕するIT・電機の展示会「シーテックジャパン2016」に出展するベンチャー企業数が、前年比2倍の100社規模になる見通しだ。シーテックは大手電機メーカーの出展見送りで地盤沈下が指摘されていた。今回は人工知能(AI)ベンチャーのプリファード・ネットワークス(PFN、東京都千代田区)など日本有数のベンチャーが出展を決定。先端ビジネスの創出の場として新たな役割を示す。

 会場ではベンチャー専用ゾーンを設ける。PFNのほか、2次元コードと各国語を結びつける「QR Translator」技術のPIJIN(東京都中央区)も初出展する。

 一方で大企業はNTTグループやトヨタ自動車、クラリオンが2年ぶりに、日立製作所が4年ぶりに出展する。またリクルートホールディングスが初めて出展し、AIの研究成果を披露する。

 今年のシーテックはIoT(モノのインターネット)と、実空間で収集したデータをサイバー空間で解析して再び実空間で展開するCPS(サイバー・フィジカル・システム)がテーマ。具体化には、国内外ベンチャーのアイデアが不可欠だ。

何が変わりますか?JEITA専務理事に聞く


日本最大のIT・電機の展示会「シーテック」が転換点を迎えている。IoT(モノのインターネット)が世界の大きな潮流になる中、シーテックはどんな価値を打ち出せるか。主催者の一つである電子情報技術産業協会(JEITA)の長尾尚人専務理事に聞いた。

(長尾専務理事)
 ―かつてシーテックは新製品を披露する場でしたが、その点を変えるのですか。
 「IoT(モノのインターネット)とCPS(サイバー・フィジカル・システム)のビジネスモデルを提案する。トレンドを作る人が集まる“東京トレンド・ビルダーズ・コレクション”と言ったところだ。『シーテックを訪れれば、その年のトレンドがつかめる』という場にする」

 ―ドイツや米国では新たな産業政策を打ち出しています。日本が目指す姿は。
 「経団連が主張する『ソサエティー5・0』のような考え方がふさわしい。未来の社会像を形作り、イノベーションによって社会課題を解決する考え方だ。(その考え方の実現に向けて)日本企業は膨大な数の製品を製造するのか、トレンドを作るデザイン力に集中するのか、ビジネスモデルを見極める必要がある。私は後者の方が合っていると考える」

 ―シーテックでは日本企業をどう支援しますか。
 「日本勢は未来を見据えてコンセプトを提示し、ビジネスモデルを提案する方法に慣れていない。シーテックでは社会や街、家、人工知能(AI)といったゾーニングをするので、ゾーンの中で表現してほしい。応募者数は5月末の段階で前年比約15%増えており、関心は高い」

 ―海外やベンチャー、異業種との連携に取り組みますね。
 「政府間の連携が進むドイツからは、閣僚級の来場を見込む。日独連携の発信の場になりうる。また日本のIoT推進コンソーシアムが進展状況を発表したり、東京五輪・パラリンピックとの連携を示したりする」

【記者の目・方向性明示、差別化に成功】
 近年のシーテックは出展者数でも来場者数でも振るわず、国際的な展示会としては退潮傾向にあった。だがIoTと社会イノベーションのビジネスモデルを提案する場に転換したことで方向性が鮮明になり、他の展示会とも差異化できた。日本企業を後押しする場として再び機能できるのかどうか、その成果が問われる。
(聞き手=米今真一郎)

日刊工業新聞2016年7月18日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
デジタル家電にスマートハウス、自動車との連携などここ最近はテーマが定まらなかったシーテック。ようやくIoTという的が定まった。テーマだけでなく、今年から土曜開催をやめ、ビジネス商談の色彩を明確化するなど出展側のニーズもしっかりとくみとるなど内側の改革も進めようとしている。米国でのCESではここ数年、ベンチャーの活躍が目立つ。大手とベンチャーの連携があたり前の米国に比べ、日本はまだ足元にも及ばないがプリファードのような会社も出始めている。 今年はモーターショーがなかったこと、主催のJEITAの会長企業ということもあってトヨタや日立が復帰したが、来年以降、その勢いを継続していくためも今年が勝負だろう。

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