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「BWRをやめるのか?と問われれば、答えはノー」(東芝幹部)

エネルギー部門のトップ、ロデリック氏に聞く。
「BWRをやめるのか?と問われれば、答えはノー」(東芝幹部)

ロデリック氏

 エネルギー部門を経営再建の柱に位置付けた東芝。同部門で成長をけん引するのは原子力発電設備事業だ。インドで6基の受注がほぼ固まるなど明るい兆しが出てきたが、世界の原発市場には不透明感が漂う。また東芝の財務基盤の弱さが受注競争のアキレス腱(けん)になる懸念もある。6月に東芝のエネルギーシステムソリューション社の社長に就いたダニー・ロデリック氏(ウエスチングハウス〈WH〉会長)に同部門の戦略を聞いた。

 ―世界の原発需要は中長期的には伸びる見通しだが、建設工事の遅延などの問題も起きています。市場動向をどう見ていますか。
 「東京電力福島第一原発事故の影響などを受けて市場が低迷していたが、回復しつつあり、各国で原発新設への興味が戻ってきた。建設の計画遅れは、原油価格の低下など経済変化が主因だ。電力供給の安定性や環境負荷が低い点で原発には優位性があり、徐々に状況は良くなる」

 ―2030年度までに45基以上の受注目標を掲げました。
 「米国と中国の受注済みの案件に加え、インドで6基、英国で3基受注できる見込み。さらに米国で2基、トルコで4基追加できそうだ。中長期的に期待できるのは中国。このほかメキシコや東欧にも注目している」

 ―原発運営ノウハウが乏しい国では、メーカーに電力会社への出資を求める事例が出ています。資金余力に乏しい東芝は不利になりませんか。
 「新興国ではメーカーと電力会社が連携するビジネスモデルが、5―10年は続く。新興国での原発運営ビジネスに興味を持つ企業は多いことから、先進国の電力会社など他の投資家と組んで対応し、東芝グループの投資額を低く抑える」

 ―東芝は沸騰水型原子炉(BWR)、WHは加圧水型原子炉(PWR)を展開していますが、受注のメーンはPWRです。今後のBWRの取り扱いは。
 「(BWRの)福島第一原発に事故が起きた後、市場が変化している。当社は改良型BWRの技術に自信があり、どう市場を作るか考えている。『BWRをやめるのか』と問われれば、答えは『ノー』。メーカーとして双方の知識と経験を有しているのは大きなアドバンテージだ」

【記者の目・日本政府の後押し不可欠】
 東芝・WH連合は技術力と建設ノウハウの両面でトップクラスに位置する。ただ今後は受注合戦が激化する見込みで、受注には日本政府の後押しが不可欠だ。また原発を建設する国の政権が交代して計画が覆るなど、海外での原発ビジネスにはリスクが付きまとう。東芝は日本政府との連携強化に加え、リスクに耐えられるよう財務基盤の拡充を急ぐ必要がある。
(文=後藤信之)
 
日刊工業新聞2016年7月12日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
東芝の原子力事業は6月末に会長になった志賀氏がハンドリングしていくことになる。ロデリック氏はこれまでWHのCEOとして東芝本体との意思疎通ができているのか?という部分も見受けられたので、今回エネルギーシステムソリューション社の社長に就いたことでそこはひとまず解消されていくだろう。ただBWR事業をこのままの状態で継続していくことには無理がある。原子力事業を経営の柱に据えたことで、業界再編への動きは逆に鈍くなったと考える。

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