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LEGOから生まれる“ロボット人材”

文=三治信一朗、中川理紗子(NTTデータ経営研究所)ドイツ・ロボカップから見えてきたこと
LEGOから生まれる“ロボット人材”

真剣に自身のロボットを見守る参加者

 7月上旬、ドイツ・ライプチヒに多くのトップレベルのロボットが集結した。本年度のロボカップ世界大会ジュニア部門にも、ロボットに情熱を注ぐ若手の精鋭が各国から参加した。会場では、自作のロボットを抱えて競技開始ぎりぎりまでロボットを調整していた。その真剣なまなざしはプロ意識を感じさせる。

 ロボカップジュニアの決まりとして、メンテナンスなどを含めた競技時間内には、保護者や指導者は一切声をかけてはならない。自分たちで問題解決方法を考え、導き出してほしいという願いからである。

 競技中の審判とのやりとりは英語であり、うまく伝わらないこともある。このような自立を求められる環境下においても、子供たちの目は輝いており、ロボットが大好きだという思いが強く伝わってくる。

試行錯誤の末に成功した瞬間の喜び


 ロボットに夢中になったきっかけは、親の影響、LEGOで遊び始めたこと、学校の授業の一環であったりと、さまざまである。しかし、彼らの持つ共通点は、ロボットのことを考えている時間や触れている時間の胸の高鳴りと、試行錯誤の末に成功した瞬間の喜びが、その表情や笑顔にあふれていることである。

 このような若手世代が、親世代にもロボットの面白さや素晴らしさを伝えてくれているのではないだろうか。参加者の父親は、子供の方がロボットに詳しく、それがきっかけで自身もロボットを見るようになった、と教えてくれた。

 また、遠方から家族総出で応援に来ている姿もあり、ロボットが彼ら家族にとって大きな意義をもっていた。彼らが成長し、社会を担う時代には、現代人がiPhoneやスマートフォンを簡単に操作し生活の一部としているように、ロボットを身近に感じられる社会となることへの期待が、若手層の大会での様子からより一層高まる。

ほんの小さな興味や素直な疑問を学べること


 必要なことは、若手世代を対象とした、ロボットに親しめるような環境作りと教育の促進である。ロボットに対するほんの小さな興味や素直な疑問から学べることが広がる。今後も彼らがロボットへの情熱を持ち続け、探究心を絶やさないことが、将来のロボット産業のさらなる発展に大きく作用する。そのためにも、ロボカップジュニアのような大会が求められる。

 タイ、中国、イランなどのロボット競合国では、金融機関が参加チームのバックアップをしている例を耳にする。若手世代へのロボット教育には、産学官による継続した取り組みが不可欠である。国や教育機関だけではなく、企業、金融機関による複線的支援が若手育成のカギとなる。
日刊工業新聞2016年7月8日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
日本も2020年の「ロボット五輪」に向けて複線的に子ども向けのイベント、教育を増やしていかないといつか「大国」ではなくなってしまう。

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