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2020年のサッカー欧州選手権の決勝はロンドン・ウェンブリー。その時、英国は?

今大会はウェールズが躍進、イングランドは評判倒れ
 フランスで開催されているサッカーの欧州選手権も終盤。ワールドカップ(W杯)を超える世界最高峰の競技レベルとされるが、英国の欧州連合(EU)離脱決定が水を差した感は否めない。

 ちょうど50年前の1966年には、今や世界経済混乱の震源地であるイングランドでW杯が開かれた。決勝はイングランド対旧西ドイツ。判定が微妙な「疑惑のゴール」によりイングランドが地元優勝を飾った。

 いまだにドイツのファンは、あのゴールを認めていない。そのドイツの最大手紙「ビルト」が、英国の国民投票前の論評で「もしEUに残留してくれたら、疑惑のゴールを認める」と提案したことに危機感の大きさをみる。

 現在のピッチに話を戻すと、イングランドは早々に敗退し、1週間に2度も欧州大陸を離脱したと皮肉られる始末。惨敗相手が2008年のリーマン・ショックで危機に瀕(ひん)したアイスランドだったのも巡り合わせか。

 準決勝はEUの盟主であるフランスとドイツが激突。もう一方の準決勝にはウェールズが勝ち残り、最後まで『ブレグジット(英国の離脱)』を阻止する構え。愛憎の歴史が絡みあう欧州からの離脱はサッカーと同様、『ブレグレット(英国の後悔)』にならないか。
日刊工業新聞2016年7月5日「産業春秋」
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
4年後の次回「ユーロ2020」は史上初めて欧州13都市で分散開催される。UEFAのプラティニ前会長が60周年記念の特別大会としてこの構想を実現させた。うまくいけば欧州の連帯の象徴のような大会になるはずだった。そして準決勝、決勝の会場はサッカーの聖地、ロンドン・ウェンブリースタジアム。なんとも皮肉だ。 今回のユーロ本大会には初めて英国4協会のうち3協会(スコットランドを除く)が出場。初出場のウェールズがベスト4まで進む快進撃である。イングランドとウェールズは政治的に近いが、ことサッカーになればライバル心むき出しになる。ドイツ、フランスという本命を押しのけて、ウェールズが優勝したら英国内はいったいどんな雰囲気になるだろうか。 ジョンソン前ロンドン市長の不出馬を契機に、英国内では残留派の声が高まり始めている。4年後、果たしてどのような景色でユーロ大会を迎えるのだろうか。

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