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ルネサス新社長、日産・カルソカン・日本電産での経験をどう生かす?

業界再編へ、大株主の官民ファンド「革新機構」の関係焦点
ルネサス新社長、日産・カルソカン・日本電産での経験をどう生かす?

呉社長(左)と日産時代の上司にあたる革新機構の志賀CEO(日産自動車副会長)

 ルネサスエレクトロニクスは28日の株主総会後の取締役会で、元カルソニックカンセイ社長の呉文精氏を社長に選任した。同日会見した呉社長は「独立系の専業半導体メーカーとして勝ちに行く戦略を取る」と、成長戦略を加速する考えを示した。焦点となっている産業革新機構が保有する69%の株式の売却については「グローバルで事業を進める上で特定の企業の傘下に入るのは望ましくない。革新機構にもその意向は伝えている」とした。

 ルネサスについて「技術や人材に非常に恵まれている」と評価。「ようやく戦える段階に立った」とし、自動車、産業・インフラといった領域に注力して「いくつかの分野でトップシェアを獲得し、世界で勝ち残っていきたい」とした。また4000億円の手元預金を元に、他社との提携や買収についても積極的に取り組む姿勢で、「私は半導体の専門家ではない。新しい目で付加価値や成長の芽を生み出したい」と意気込みを語った。
日刊工業新聞2016年6月29日
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
「単に社長になるだけでなく『どうやって日本に産業を残すか』という話。なかなか大変だがやりがいがあると感じた」。社長就任を持ちかけられた際の気持ちをこう打ち明けた呉社長。会見では「優勝」という単語を何度も使い、リスクを取りながら攻めの経営をしていく姿勢を強調した。 呉社長の就任に際しては、周囲から「業界を知らない銀行屋さんができるのか」との声も聞こえていた。しかし日産のカルロス・ゴーン社長の「答えは会社のなかにある」という言葉を引用し「私は半導体について知らないが、半導体のプロは社内に十分いる」と述べる。プロパーで生産畑を歩んできた鶴丸哲哉会長との二人三脚も、大きなポイントになるだろう。 呉社長は「グローバルで戦うには現状の7000億円の売上高では不足だ」と話す。一方、世界では成長に向けた買収が相次ぎ、構造改革に追われてきたルネサスは出遅れている状況だ。その中でどんな戦略を描くのか。

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