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英国・離脱ショックに最も強い資産「金」、高値圏で推移か

米国の追加利上げ観測後退、余剰資金の流入が続く
 英国の国民投票で欧州連合(EU)離脱が確定し、世界の株式市場、為替相場に衝撃が走っている。米国の追加利上げ観測の後退を背景に、投資家のリスク回避の姿勢などから円買いの動きが加速しそうだ。急激な円高は輸出型企業の業績に影を落とし、株価を押し下げる要因になりかねない。安全資産とされる金が買われる動きも続きそうだ。

 投資家のリスク回避の動きから安全資産とされる金が買われ、24日、金先物相場は国内外で急上昇した。東京商品取引所の金先物相場で取引の中心となる2017年4月ぎりが一時、前日比132円高のグラム当たり4370円と1週間ぶり高値に続伸した。

 貴金属の国際指標となるニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物相場は、24日午後の時間外取引で一時、前日比100ドル近く高いトロイオンス当たり1360ドル台に上昇した。

 金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏は、「市場では相当程度、EU残留が織り込まれていたため、市場が一気に混乱、金に投資資金を逃避させる動きが強まった」と指摘する。

 野村証券の大越龍文シニアエコノミストは、「金融市場の不安定化により、米国の追加利上げ観測は後退。余剰資金の流入が続くとの見方から金相場は当面、高値圏で推移するのではないか」と見通す。

 資金は金先物市場だけでなく、年金基金など中長期の保有が多いETF(上場投資信託)にも流入。金ETFの代表銘柄、SPDR(スパイダー)ゴールド・シェアの金保有残高は915トンを超え2年9カ月ぶりの高水準にある。

 ICBCスタンダードバンクの池水雄一東京支店長は、「中長期の資金も金融市場へ不安を抱いている証だ。米大統領選では“トランプリスク”もくすぶる。米連邦準備制度理事会(FRB)は追加利上げに動きにくく、金相場を支える」と話す。

 今回の英国国民投票の結果が欧州各国に波及するリスクも強まっている。資源の価格リスクマネジメントコンサルタント会社、マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表取締役は、「国民投票の結果を受けてイタリアやフランスでEU離脱を訴えてきた人々がマジョリティーとなりつつある」と指摘する。

その上で、「これらの国でも国民投票が行われる可能性が高まっていることから、当面こうした政治イベントが金価格を高止まりさせるだろう」(新村氏)と分析する。
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日刊工業新聞2016年6月27日「深層断面」から抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
野村証券の試算によると、EU離脱により英国の国内総生産(GDP)は最大6%低下する見通し。だが、欧州中央銀行が期間の長い外貨供給オペを実施するとみられ、英国とEUの交渉に2年程度かかることから影響は限定的か。

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