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地方アンテナショップ「新潟館ネスパス」に見るマンネリ打破力

次の集客ターゲットはインバウンド
地方アンテナショップ「新潟館ネスパス」に見るマンネリ打破力

ネスパスでは毎週末のように企画を展開

 東京都内に拠点を構える地方のアンテナショップが熱い―。安倍晋三政権の地方活性化政策「地方創生」の波に乗り、このところ売り上げを伸ばすアンテナショップが増えている。特産品中心という商品政策の中で、飽きの来ない販売体制をどう築くか。各ショップは集客に知恵を絞っている。

北海道、沖縄は安定の強さ


 地方のアンテナショップは、今では都内に設置していない道府県がないくらい多い。だが、種々ランキング調査で上位にランクされるのは、やはり北海道と沖縄県。特に食の宝庫、北海道の「どさんこプラザ」は、ランキングで1位になることが多い。

 東京・有楽町の同プラザは売り場面積が約200平方メートルと小型ながら、2015年度の売上高は前年度比2ケタ近い伸びの10億円超と過去最高を記録した。食品の売り上げが9割を占め、売れ筋商品は「ロイズ」のチョコレートや「とうきびチョコ」など、北海道内でもお土産品として定番の商品だという。

 地方の特産品は品目数が限られ、マンネリ化も懸念されるが、そこは各アンテナショップ、知恵と工夫でリピーターを増やす戦略を展開している。

 どさんこプラザでは四半期ごとに、道内の加工食品メーカーなどから発売より日が浅い商品や、同プラザ専用の商品などのエントリーを受け付ける。毎回100品目程度を新規に導入。3か月程度で上位の半分を残し、さらに3か月かけて、この中の上位10位を定番化する。いわば上位の顔ぶれを決める“総選挙”を展開し、常に商品政策に鮮度感を持たせている。これが売上高の高い伸びの一因ともなっている。

全館あげて新潟の情報発信、Iターン相談窓口も


 一方、北海道、沖縄ほど有名な観光地ではないが、ショップの人気ランキングで上位に入るのが、東京・表参道にある新潟県の情報発信基地「新潟館ネスパス」。同館も15年度は、5年連続で入館者数が100万人を突破。販売額は過去最高の約6億5000万円を記録した。

 ネスパスは地方創生の波にも合致。新潟特産品の物販だけでなく、新潟旅行商品の販売、UターンやIターンの相談窓口を持つ。全館挙げて新潟の情報を発信しているのが特徴だ。

 また、定期的な大規模イベントと物販ゾーンで、ほとんど毎週末のように行っている小企画を組み合わせ、販促企画を展開している。

 手を替え品を替えて、飽きの来ない運営を行っている。このためリピーター率が7割という。坂井敦館長は「今後は百貨店のように、上階のイベントから、物販につなげるシャワー効果をもっと発揮させたい」と話す。

都内中心から外国人へ


 東京・銀座にある沖縄のアンテナショップ「銀座わしたショップ本店」もイベント推進組だ。食品のほか地下1階に工芸館を設置。沖縄の伝統工芸品である「紅型(びんがた)」「琉球かすり」、また「かりゆしウエア」などを展示販売。さらに、三線(さんしん)教室やトークショー、歌手によるライブショーなども展開し集客を強化している。

 東京都内のアンテナショップはこれまで、都内などから集客を増やし伸びてきた。しかし、15年度に年間の訪日外国人旅行者(インバウンド)数が2000万人を超えた中で、各ショップとも「インバウンドの来店をいかに増やすかが課題」と口をそろえる。インバウンドは今後の成長に欠かせないキーワードになりそうだ。
(文=森谷信雄)
日刊工業新聞2016年6月24日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
アンテナショップとインバウンド、ビジネスチャンスがあるような気がします。インバウンドも今後は、有名な観光地から、まだ海外で知られていない観光地を探し始めるのではないかと。そうすると、都内にある地方のアンテナショップの出番ではないかという気がしています。

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