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病理医不足解消へ、フィリップスと長崎大がタッグ

8月からレポートシステムの実証開始
病理医不足解消へ、フィリップスと長崎大がタッグ

フィリップスの病理システム「デジタルパソロジー」を活用した実証試験を開始

 フィリップスエレクトロニクスジャパン(東京都港区、ダニー・リスバーグ社長、03・3740・5896)は、長崎大学と組み、「遠隔病理レポートシステム」の実証試験を8月に始める。病理画像やリポートを多施設間で共有し、病理医同士でダブルチェックしたり、遠隔地の専門医からアドバイスを受けやすくする。深刻化する病理医不足の対策も狙い、2017年中にも同システムの商品化を目指す。

 同システムは病理のガラス標本を専用スキャナーで読み取りデジタル化して、保管、観察する。そのデータを多施設間で共有して、病理のリポート作成や診断のサポートなどにつなげる。

 診断精度を向上できるほか、適切な治療方針により医療費削減など経済的効果も期待できる。また、病理医は都市部に多く地方に少ないことから、「同システムにより病理医の偏在を仮想的に是正できる」(フィリップス)とみている。

 診断リポートを活用して、若手の病理医育成に役立てたり、産休・育休中の女性病理医の雇用創出、新しい働き方なども期待している。フィリップスが商用化している情報通信技術(ICT)を活用した病理システム「デジタルパソロジー」を活用する。なお、実証にかかる費用は明らかにしていない。

 日本の病理医は国民10万人当たりの比較で米国の3分の1程度にすぎず、大幅に不足している。一方、病理診断件数は増加傾向にあり、手術中の検査数も増えている。都心部に多く、地方に少ないという“地域間格差”のほか、病理医の高齢化も課題となっている。
日刊工業新聞2016年6月16日ヘルスケア面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
日本人の2人に1人が罹ると言われる「がん」。病理医は「がん」の最終判断や治療方針を決める重要な医師だが、病理医は日本で約2000人しかおらず、医師不足は深刻だ。よく人数が少ないと指摘される救命医や小児科医よりも少ないとか・・・。がん患者数の増加や病理医不足、病理医の地域偏在など、課題解決の術となるか。実証試験に期待が集まる。

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