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「シビレエイ」で発電機が作れる!?理研、強電気魚の「電気器官」利用

 理化学研究所生命システム研究センターの田中陽ユニットリーダーらは、電気で敵を攻撃する強電気魚の一種「シビレエイ」の機能を利用した発電手法を開発した。電気を発する器官をシビレエイから摘出し、同器官を組み込んだ“発電機”を製作。化学的な刺激を加えて発電させた。その結果、最大電圧1.5ボルト、最大電流0.25ミリアンぺアを達成し、電力をコンデンサーに蓄電できることを実証した。

 強電気魚はブドウ糖から変換したアデノシン三リン酸(ATP)をエネルギー源として高効率に発電する。発電原理を応用することで、生体内や生活排水などに多く含まれるATPを活用した発電機の開発につながる可能性がある。


<欧州西海岸や米国西海岸、日本近海など世界に広く生息するシビレエイ(理研提供)>

 シビレエイは電気を発する「電気器官」を1匹当たり2個持つ。電気器官はソラマメのような形状をしており、1個の大きさは幅3センチ×長さ10センチ×厚さ1センチメートル程度。電気器官の中は、六角形の薄板状の発電細胞が積み重なった「電気柱」が多数集積している。

 研究グループはシビレエイから採取した電気器官に注射針を刺し、神経伝達物質「アセチルコリン」を同器官内に注入。同物質による化学的刺激で最大電圧91ミリボルト、最大電流0.25ミリアンぺアの発電が1分強続くことを確認した。

 その後、電気器官を約3センチメートル角のユニットに切断し、同ユニット16個を直列につないだ発電機を作った。その結果、最大電圧が1.5ボルトに高まり、コンデンサーに蓄電できた。成果は31日、英電子版科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。
日刊工業新聞2016年6月1日 科学技術・大学面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
バイオミメティクスの一種でしょうか。この器官を進化の過程で持つようになったシビレエイはすごいですね。

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