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日立が米国で初めてプライベートショー開いたワケ

IoTでGEの牙城に攻め込めるか!?
日立が米国で初めてプライベートショー開いたワケ

米ラスベガスで29日講演する中西CEO

 日立製作所は29日(米国時間)、北米事業を強化するため、米国で初となるプライベートショーをラスベガスで開いた。電力やヘルスケア、自動車などの分野で社会課題の解決策を提案する「社会イノベーション事業」を本格的に着手する。モノのインターネット(IoT)技術やビッグデータ(大量データ)分析を活用し、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の牙城である北米市場を攻略する。

 当日は米国の電力会社やIT会社など重要顧客ら約500人を招いた。中西宏明会長兼最高経営責任者(CEO)は討論会に出席し「顧客は何を欲しがっていて、そのニーズに技術をどう適合させるかが重要だ。北米の社会プロジェクトに貢献できるものを提供したい」と強調。顧客の問題解決に向け、寄り添う姿勢を鮮明にした。

 北米では車部品や情報通信などの事業を行う一方、社会イノベーション事業の展開は遅れていた。ただ電力設備や水処理施設の老朽化など社会課題が顕在化しており、開拓できる余地が大きいと判断した。

 今夏にはビッグデータ分析ソフトを開発する米ペンタホ(フロリダ州)を買収する予定で、生産設備の稼働情報を収集・分析し稼働率の向上や故障の防止を支援できるようになる。こうしたビッグデータを活用したソリューションを拡大し、2020年度までに北米事業の売上高を15年度予想に比べて2倍の2兆円に引き上げる意向だ。例えば電力分野では再生可能エネルギーの普及に備え、電力需給の調整や系統安定化に資するシステムを提案する。ビッグデータを用い、効率的な運用・保守サービスも実現できる。自動車分野では、部品の稼働情報を集めて分析し故障の予兆診断に活用するなどの取り組みを進める。

 北米市場は自動車やオイル&ガス、電力などの分野で安定した成長が期待される。一方でGEや独シーメンスなど海外勢も攻勢を強めており、開拓は容易ではない。東原敏昭社長兼最高執行責任者(COO)は「米国で社会イノベーション事業に積極的に投資し、エネルギーやヘルスケア、自動車などの分野で貢献できる」と、日立の優位性を訴えた。社会イノベーション事業の真価が問われることになる。(ラスベガス=敷田寛明)
2015年05月01日 電機・電子部品・情報・通信面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
中西会長は2年ほど前から北米市場を改めて重視している。ブラジルやインドなど新興国が今ひとつ伸び悩む中で、北米は安定成長が期待できるから。特に北米で中核事業となるのは情報通信。キーマンは北米総代表と現地の情報子会社のトップを務めるジャック・ドメ。4月から日立本社役員に昇格したことで、本社のしがらみにまみれてしまうのか、それともある程度の自由な権限を与えられ動けるのか。会って話すと、なかなか面白い人物である。

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