ニュースイッチ

ワイン不作なくなり、日本酒の特徴倍増させる「膜」とは?

三菱化のゼオライト膜、世界視野に脱水濃縮用途向け開拓
ワイン不作なくなり、日本酒の特徴倍増させる「膜」とは?

ゼオライト膜でワイン市場を狙う

 世界のワインから不作の年がなくなるかもしれない。三菱ケミカルホールディングス傘下の三菱化学が醸造酒などから水分子のみを分離する「ゼオライト膜」でワイン市場を狙う。これまで日本酒での採用実績はあるが、欧州や米国、南米と産地の広がる巨大市場へ売り込んでいく。

酒の特徴が“倍増”


 管状のゼオライト膜は醸造酒のタンクに入れると、膜の微細な穴から水分子のみ透過して管内に分けられる。加熱するとアルコールやうまみ成分が飛んでしまう日本酒やワインの脱水濃縮に最適だ。また、他社製品と比べて耐酸性・耐水性に優れており、酸味のある液状商品に向く。機能化学本部の垣内博行機能性無機事業推進室長は「濃縮されてアミノ酸や糖分が際立つ」とし、日本酒などの特徴が“倍増”されるメリットがある。

ワイン糖度上がる


 ワインはブドウを搾った段階で脱水濃縮すると、糖度が上がる。それから醸造すると濃く美味なワインが出来上がるという。「日本でもフランスでもドイツでも、天候不順だと糖度が低くて不作と言われる。ただ、ワインは水など何も加えてはいけないので、ブドウ自体の糖度を濃縮すると面白い」(垣内室長)と期待は大きい。

品質向上に貢献


 一方、醸造後のゼオライト膜利用も可能だ。「できたワインがアルコール度数11度ぐらいの薄いワインだった時に、濃縮して13度にしてもいい」(同)と品質向上に貢献できそうだ。まずは国内のワインメーカーへ売り込んで実績をつくりつつ、海外展開を目指す。

 同社は現在、穴の比較的大きなゼオライト膜を開発中だ。従来は水分子のみを通してきた穴を広げて、エタノール分子も通るようにする。「アルコールを低減することが可能だ。あまり酔わない日本酒やワインのニーズもある。できるだけ早く市場投入したい」(同)と脱水と脱アルコールの両面作戦で事業拡大をもくろんでいる。

 酒造会社の西野金陵(香川県琴平町)が三菱化学と共同開発して、2年前からゼオライト膜を活用した日本酒を販売。アルコール度数は30度だ。試飲経験者は「まるで白ワインのような深い香りと甘みを感じて、後からアルコールが来るお酒」と評する。

 三菱化学は醸造酒向け総合ソリューションを提供したい考えだ。
(文=鈴木岳志)
日刊工業新聞2016年5月18日 素材・ヘルスケア・環境
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
お酒をおいしくする秘密は「膜」。他の酒に応用しても面白いものが作れそうな気がします。

編集部のおすすめ