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「新潟市」が新たな航空機産業の集積地として浮上!

エンジン部品に加え、機体部品の共同工場が稼働へ
「新潟市」が新たな航空機産業の集積地として浮上!

新潟メタリコン工業が導入したアルミ表面処理設備

 新潟市が航空機関連産業の育成を推進する「NIIGATA SKY PROJECT」から生まれた、共同受注グループ「NSCA」の参加企業が入居する共同工場(新潟市南区)が本格的に稼働する。ポイントは国内重工大手の多工程一括発注に対応するため、各工程を担う企業を同一工場に「集積」させたことだ。今後、共同で受注活動を展開し、アルミ製機体部品や装備品部品を一貫生産する。

工作機械に測定機、メッキ槽まで勢揃い


 共同工場は新潟市の産業支援機関である新潟市産業振興財団が所有・管理しており、NSCAのメンバー7社のうち、5社が入居する。延べ床面積は2880平方メートルで建設費は6億5000万円だ。13日に竣工(しゅんこう)式を行った。

 柿崎機械(新潟県上越市)は長さ3メートルまでの機体部品を切削加工できる機械と3次元測定機を設置し、すでに生産を始めている。新潟メタリコン工業(新潟市東区)は幅3・5×高さ1・5×奥行き0・8メートルのメッキ槽を29槽有するアルミ表面処理設備を導入した。

 入居企業の業務内容は、柿崎機械と佐渡精密(新潟県佐渡市)がともに精密切削加工。ただ、柿崎機械は中・大型を、佐渡精密はこれまでの実績を生かした小型をそれぞれ手がける計画で、役割分担は明確化されている。

(「NSCA」の構成企業)

エンジン部品の共同工場とも連携


 一貫生産以外のポイントは単なる貸し工場ではなく、“戦略的複合共同工場”であることだ。柿崎機械と新潟メタリコン工業が設置した機械を見れば分かるように、「競合が少なく、需要が多い3メートルクラスの中物部品に対応している」(新潟市経済部企業立地課航空産業立地推進室の宮崎博人室長)。

 航空機産業の集積に関連して、すでにJASPA(横浜市保土ケ谷区)など4社が、航空機エンジン部品の共同工場(新潟市西蒲区)を建設しており、今後は約10キロメートル圏内にあるNSCAとの連携が期待される。新潟市の篠田昭市長は「重工大手からしっかり受注できる体制を整える。今が一番の正念場だ」と訴える。

 新潟メタリコン工業の井筒昇社長は「連携しないといけない。(航空機産業に携わる企業が集積する)クラスターを形成する」と意欲を示す。JASPAの阿部和幸社長も「生産した部品をNSCAに運び、表面処理などを行うのがきれいな形」と前向きだ。

 今後、新潟市は新潟県と協力し、県全体に波及効果を発揮させる考えだ。同県村上市にはジャムコが航空機内装品で工場進出している。また燕市や三条市、長岡市は”モノづくりの街“として全国的に知られ、高い技術力を持つ企業は多い。これらの連携が実現できれば大きな産業の成長エンジンになる。

(文=新潟支局長・中沖泰雄)
日刊工業新聞2016年5月12日 機械・ロボット・航空機面記事
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
部品の共同工場(一貫生産)は国内航空機産業のトレンド。記事にも出てくる新潟市の宮崎室長を私も存じ上げていますが、市が主導して一貫生産化を進めるその熱心な姿勢には脱帽です。他の自治体にはほとんどない、といっていいものだと思います。  「自治体の企業誘致」とひと言で言っても、ただ補助金や税制優遇をするだけでなく、こうして企業ニーズを先取りするような具体的な取り組みを進めることが必要でしょう。結果として、企業の集積が進めば良いわけですから。

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