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会長に起用する志賀氏 「過去ではなく新生東芝に必要な人」(小林委員長)

綱川次期社長と二頭体制か
会長に起用する志賀氏 「過去ではなく新生東芝に必要な人」(小林委員長)

綱川氏(左)と志賀氏

 東芝は6日、綱川智副社長(60)が社長に昇格するトップ人事を発表した。室町正志社長(66)は退任し、特別顧問に就任する。志賀重範副社長(62)は会長に就く。6月下旬に予定する株主総会を経て正式に就任する。リストラに一定のめどをつけて、交代となった。新体制にとって、不正会計問題で損なわれた信頼回復と、財務基盤の強化が喫緊の課題となる。

 綱川氏は医療部門の出身。同部門をグローバルに展開した手腕と、室町社長の補佐役として事業構造改革に取り組んだ実行力などが評価された。志賀氏は原子力部門での実績が評価され、引き続きエネルギー関連を管掌する見通し。これに加えて、東芝のブランド価値回復に取り組む。

外部から土光さんを招いた時代とは違う<会見記>


 -当面の課題認識は。
 綱川次期社長「財務体質の強化だ。注力する3事業をしっかり成長させる。パソコンはコスト削減で自力再生の道を歩むが、再編も同時に検討する」

 志賀重範次期会長「損なわれた東芝に対する信頼感や、ブランドイメージをどう回復するか。それに尽きる」

 -室町社長が退任の目安としていた特設注意市場銘柄の指定解除は道半ばだ。
 室町社長「道半ばはその通り。株主総会を節目に新体制を立ち上げた方が、将来の東芝にとって良い姿になるという指名委員会の判断に従う。私は執行役サイドの要求に応じて、指定からの脱出へ全力を尽くしてサポートする」

 -外部人材の登用はどう検討したか。
 小林喜光指名委員会委員長「外部の方も数人と会ったが、今は事業領域が広くて深く、外部から土光敏夫元社長らを招いた時代とは違う。急激に財務が傷み、エネルギーは長期戦略が必要で、半導体などのストレージは短期的な大規模な投資が必要だ。第4次産業革命も進む。東芝を最も知る人から選ぶことが、新生東芝を成長させる力になる」

 -担当した医療機器事業売却の感慨は。
  綱川次期社長「財務基盤の弱い東芝に残るよりも、日本の産業としてもよかったのではないか。娘が嫁いだ父親のような気持ちだ。必ずや大きく成長し、幸せになってほしい」

 -社長交代は人員削減などの責任を取ってのことか。
  室町現社長「人員削減、白物家電や医療分野の売却、賃金カットなどに、経営責任を感じている。それも委員会の考えの一端だ」

 小林委員長「解雇も含めて責任を重く受け止めて人事を考えた」

 -ウエスチングハウスの損失開示姿勢ついて問題が指摘された志賀氏を会長に選任した理由は。
 小林委員長「過去ではなく、(志賀副社長を)新生東芝に必要な人と考えて判断した」

 -一連の不正会計は多くの部門に広がっていた。企業風土改革は大変なのでは。
  綱川次期社長「物言えない風土であったことは、言われてる。自ら姿勢を示すことで引っ張りたい」

 志賀次期会長「構造改革の遅れもあった。具体的な対策は改善計画を出し、細かい分析もある。きちんと実行していくことだ」

 -(不正会計の)過去と決別するなら、会長は別の人という判断もあったのではないか。
 小林委員長「志賀副社長は、原子力に知見と人脈がある。強い東芝になるには余人を持って代えがたい。原子力という国策的な事業には、外に向かっては『会長』という立場が適当だと判断した。ブランドイメージ向上にも取り組んでもらう」

 -これまでの仕事で最も印象に残っていることや、座右の銘は。
 綱川次期社長「海外に15年駐在した。その際、米国での組織作りが難しく、苦労した。座右の銘は特にないが、『餅は餅屋』。プロに任せ、自立的な運営を尊重して、私は大所から物事をみる」
<略歴>
 ●綱川智(つなかわ・さとし)79年(昭54)東大教養卒、同年東芝入社、2010年東芝メディカルシステムズ社長、14年東芝執行役上席常務、15年取締役兼代表執行役副社長。東京都出身。
 ●志賀重範(しが・しげのり)79年(昭54)東北大工学部原子核工学科修士課程修了、同年東芝入社、2011年執行役上席常務、14年執行役専務、15年代表執行役副社長。東京都出身。

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
今回の人事のポイントは新設する代表執行役会長に原子力などを担当する志賀副社長を起用すること。会見では過去の開示義務違反を指摘された志賀氏について「過去は若干のグレーと認識している」(小林委員長)としたが、東芝が原子力事業へしっかりコミットしていくという意思表示だろう。執行役なので原子力などのエネルギー部門の所管にもなる。次期社長の有力候補の一人でもあった半導体出身の成毛副社長は引き続き、今のポストに留まり半導体事業のあらゆる選択肢に備えるのではないか。

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