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日本HP、「メード・イン・トウキョウ」貫く。ノートPC生産を日野に移管

昭島に比べ生産能力を2倍に引き上げ法人向けで生き残り
日本HP、「メード・イン・トウキョウ」貫く。ノートPC生産を日野に移管

左は昭島工場

 日本HP(東京都江東区)は国内のノートパソコン生産を、新設した日野工場(東京都日野市)に今夏にも完全移管する。現在は昭島工場(同昭島市)の生産能力は1日当たり約6000台だが、新工場は将来この2倍の生産能力に引き上げられる広さとする。日本勢はPC事業の再編や事業縮小を検討する一方で法人用は強化している。日本HPは短納期で納入できる体制を整え、攻勢をかける。

昭島工場での生産逼迫(ひっぱく)を受けて、移転を決めた。すでに移管を始めており、新工場での生産品質を確認しながら、今後2カ月程度で全製品の移転を終える計画。

 国内メーカーのパソコン事業は厳しさが続く。生き残りに向けて、東芝富士通のパソコン部門、ソニーから独立したVAIO(長野県安曇野市)は統合を図っていたものの、条件が折り合わずに頓挫。各社は個人用より需要の見込める法人用を強化しており、限られた市場を巡って競争は激しくなりそうだ。
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「受注生産品を5営業日で納入できる」


日刊工業新聞2013年7月10日「戦略ライン・強みはここ」


 東京・新宿から電車で約45分。都心のベッドタウンとして発展した東京都昭島市に日本ヒューレット・パッカード(HP)の昭島工場はある。日本HPがパソコンのうたい文句とする「メード・イン・トウキョウ」を支える重要拠点だ。

 「お客の仕様要求に応じた受注生産品を5営業日で納入できる」―。清水直行日本HP昭島事業所長は昭島工場をこうアピールする。

 日本HPは量販店などで売る普及パソコンは海外生産、高機能品や受注生産品は昭島工場で手がける体制を敷く。昭島工場では受注品が7割を占め、構成部品の組み合わせにより生産機種の種類は膨大になる。

 多品種・短納期を支える組み立てラインはシンプルだ。全長9メートル。まず3メートルのスペースで1台分の部品を準備し、その後、残りの6メートルで組み立てる。生産能力は最大で1日6000台。

 「実際には一品一様なんですが、同じ製品を作っているように見えるでしょう」―。清水所長はラインを指し示しながら工夫を説明する。ポイントは部品の準備にある。筐(きょう)体、マザーボード、プロセッサーの三つの基盤部品が共通の製品を一括りにして部品を用意する。作業者が似通った製品を連続して組み立てられるようにして効率を高める狙いだ。

 工夫ポイントの二つ目は、人の判断を減らした点。部品一つひとつをバーコード管理し、注文通りに製品が組み立てられているかを照らし合わせながら作業を完了させる。部品の組み付け間違いなどによる作業ロスを排除している。

 昭島工場の組み立てラインは6本あり、すべて同じ仕様となっている。これが工夫ポイントの3番目だ。受注品を多く手がける同工場は、生産台数の変動が激しい。汎用ラインであれば全ラインを効率的に使い変動を吸収できる。「全体最適を重視し柔軟性を確保した」と清水所長は解説する。

 日本HPがパソコン事業の主戦場と位置づける法人市場では、受注生産対応と短納期を高レベルで要求される。昭島工場が競争力の源泉となり、同社は法人市場で15%程度のシェアを持つ。ただ今後、法人パソコン市場は競争激化が必至。「昭島工場の役割はますます高まる」と清水所長は話し、不良率の低減などをテーマにさらなる進化を狙う。

※内容、肩書きは当時のもの
日刊工業新聞2016年4月29日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
昭島から日野への移管は場所的にはほとんど同じ多摩地方に感じるが(そちらの方、すいません)。でも「メイド・イン・タマ」とも言えないだろうし。HPの移管戦略はよく分からないが、国内市場に関しては富士通と東芝のリストラがどう決着するか。シェアは2社合わせてまだ3割あるので。海外で事業をしないならアイリスオーヤマとかのようなSPA(製造小売業)のようなところが買い手にならないだろうか。

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