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農業ロボット、機能進化するも普及は? 収穫や箱詰めアシスト

農業ロボット、機能進化するも普及は? 収穫や箱詰めアシスト

両腕の位置を固定し摘み取り作業を楽にする「果樹用腕上げ作業補助器具」

 農業従事者の高齢化が進むなかで、農作業の負担を軽減するロボットや器具への期待が高まっている。農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の農業技術革新工学研究センター(さいたま市北区)が埼玉りそな産業経済振興財団と開いた「第3回農業ロボット研究会」でも、今後活躍が期待される農業ロボットが注目された。高価格といった課題はあるものの、機能そのものは着実に進化している。

 開花前に果房の大きさを整える「花穂整形」、果粒数を調整する「摘粒」、さらには「袋かけ」など、一日中腕を上げた作業を強いられるブドウ果樹園。こうした非常に負担の大きい作業を軽減するため、同センターが開発したのが「果樹用腕上げ作業補助器具」だ。

 腰と両腕をベルトで固定するシンプルな構造で、腕を器具で支えた状態で作業できるため、長時間腕を上げたままでも疲れにくい。腕の高さも自由に変えられる。重量は約1・5キログラムと軽量だ。同センターの聞き取り調査では、器具を使った作業者8人のうち7人が「摘粒作業が楽になった」と回答した。

 共同研究企業のニッカリ(岡山市東区)が2015年に約4万円で試験発売し、これまでに約10台を販売した。4月には腕を固定する部分や腰のベルトを改良し、本格的に発売。ただ、依然として高価な点は課題だ。

 イチゴをカメラで撮影、果実の位置と着色度を判定し、収穫に適したイチゴだけをロボットが自動で収穫する「イチゴ収穫ロボット」。これも同センターの開発製品だ。シブヤ精機(浜松市東区)が14年に約500万円で発売。とはいえ、販売実績はまだ少ない。

 収穫したイチゴに傷を付けずにパック詰めできる「イチゴパック詰めロボット」も開発。ヤンマーグリーンシステム(大阪市北区)が15年に市販化した。価格は仕様によって異なるが、3月末までに販売実績はない。

 一方、安全面で活躍が期待される技術は、コメなどの収穫で使用するコンバインの緊急停止装置だ。作業時は磁石を貼った特殊な手袋を装着しないと、コンバインのチェーンを動かせない。チェーンに巻き込まれる危険性のある部分に手が接近すると、磁気センサーが手袋の磁石を検出し、可動部が自動停止する。同センターの担当者は「事故を未然に防止する技術が、農業機械に積極的に導入されることを期待する」と語る。

 農林水産省生産局生産資材対策室の齊賀大昌課長補佐は、農業ロボットについて「作って終わりではなく、どうやって普及につなげていけるかが課題だ」と強調する。今後はロボットの低価格化や利用者の制限をなくすことで、農業ロボットの活躍の場が広がるはずだ。
(文=福沢尚季)
日刊工業新聞2016年4月15日 中小企業・地域経済2面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
価格が大きな壁になっているように思います。機能の進化ももちろん重要ですが、「導入しやすい価格でシンプルな機能」というロボットがあれば、試しに使ってみようという事業者が増えるのではないでしょうか。

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