OECD事務総長が「消費増税」に新提言。毎年1%ずつは小売り業界の理解必要か

政府債務「GDPの230%」を軽くみるべきではない。将来の消費税15%は真摯に受け止めるべき

 政府は13日、内外の有識者らと世界の経済・金融情勢について意見交換する「国際金融経済分析会合」の第5回会合を開いた。講師に招いた経済協力開発機構(OECD)事務総長のアンヘル・グリア氏は、日本が2017年度に予定する消費増税(税率8%を10%)について、経済状況によっては17、18の両年度に「1%ずつの段階的な引き上げ」を行うことが望ましいとの見解を示した。安倍晋三政権にとり三つ目の選択肢が浮上した。

 国際金融経済分析会合は17年度の消費増税を(1)予定通り実施する(2)増税を延期する―のいずれかを安倍政権が判断する材料となる。グリア氏の提言により、同会合を通じた政権の選択肢が三つに増えた格好だ。

 グリア氏は会合で、経済状況の条件が整えば「(消費税率8%か10%への)2%の引き上げは予定通り完全に実施されるべきだ」とする一方、条件が許さなければ「毎年1%ずつの段階的な引き上げを2回(年)連続して行うことが望ましい」とし、いずれを選択するかは「最後は政治判断だ」と語った。

 OECDは日本の16年の実質成長率を0・8%、17年は0・6%と低成長を予測。世界経済の回復も「依然として不透明」(グリア氏)とし、消費税率の引き上げ幅を緩やかにする選択肢を示した。

財政事情に警鐘「OECDでは初めての経験」


 ただグリア氏は日本の財政事情に警鐘を鳴らし、「公的債務残高の対国内総生産(GDP)比が230%というのはOECDでは初めての経験だ」とし、中長期的には「消費税率は15%に引き上げる必要がある」と提言。その際も毎年1%ずつの引き上げが「最善」だとも語った。

 同日の会合にはアジア開発銀行(ADB)チーフ・エコノミストのシャンジン・ウェイ氏も講師に招いた。安倍首相が「中国(政府発表)の成長率は実態を表しているのか」と質問したのに対し、ウェイ氏は「多くの人が疑問を持つ。(だが)ADBが予測した6・5%(16年見通し)は現実に即したものだ」と述べた。日本の消費増税延期の是非は言及しなかった。

 政府は5月末の伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)まで同会合を複数回開く予定。

日刊工業新聞2016年4月14日
日刊工業新聞社電子版

安東 泰志

安東 泰志
04月14日
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政府債務がGDPの230%に達していることを軽く見るべきではない。過去にこれに近いレベルの過剰債務に直面した国は、多くの場合にハイパーインフレーションで問題を解決せざるを得なくなった。これは国民にインフレ税を払わせるものであり、国は疲弊する。将来的に消費税を15%に上げるべきとの提言は真摯に受け止めるべきだが、毎年1%ずつ上げるためには、軽減税率への対応も迫られている小売業界の理解が必要になる。

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