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製造業が電力調達の多様化に動き出した!

自家発電拡大やPPS運用でエネルギーコスト削減
 電気代の上昇に対抗しようと、製造業が電力調達を工夫している。富士フイルムホールディングス(HD)は5月、富士宮工場(静岡県富士宮市)の自家発電からの電力供給先を1拠点追加する予定だ。自家発電の電力を共有する拠点を19事業所に拡大し、エネルギー費を抑える。パナソニックホンダは自社が新電力(PPS)となり、グループ拠点の電力をまとめて調達している。電力小売りが全面自由化され、電力の調達手段の多様化が進みそうだ。

 富士フイルムHDは、自家発電機の電力を電力会社の設備を使ってグループ拠点に送れる電気事業法の「自己託送」を活用する。14年4月の開始直後は富士ゼロックスを含む神奈川県、栃木県、茨城県内の工場、東京都内の事務所など16拠点に供給していた。15年にさいたま市の工場や都内の関連会社を追加していた。

 各拠点とも自家発電からの電力供給で、電力会社から購入する電力を減らす。自家発電なので燃料費が富士フイルムHD側でわかり、電力コストを管理しやすくなった。

 パナソニックは自社が立ち上げた“パナソニックPPS”が、外部の発電事業者から3億キロワット時を調達し、グループ420拠点に供給している。資材や部品のように電力も一括調達しコストを抑える。再生可能エネルギーの比率も7%に高めた。

 ホンダも自社でPPSを運用し、15拠点に電力を供給している。東京・青山の本社ビル以外は小規模な施設への供給が多く、月100万キロワット時ほど。PPSの経験を再生可能エネルギーや水素など二酸化炭素(CO2)排出の少ない電力供給に生かす狙いもある。

 日産自動車は2015年度末までに、関東地区のグループ全体と販売会社が使う電力の70%以上の調達方法を変えた。

 日産の8拠点、グループ会社の8拠点には電力会社とPPSから供給を受ける「部分供給」を採用。全国の販社1000店にはグループのPPSが電力を供給する。
日刊工業新聞2016年4月8日エネルギー面
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
あたらめてまとめてみると「自由化が進んだ」という印象を持ちました。製造業が使う電力は以前から自由化済みとはいえ、全面自由化に向けて電力調達の多様化が加速してきました。富士フイルムHDの自己託送、日産の部分供給も比較的、新しい仕組みです。今後、企業の垣根を越え、例えば工業団地で一括調達も出てくるかもしれません。

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