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北海道新幹線、あす開業。道南・東北「商圏」に期待膨らむ

産業界では冷静な意見も
北海道新幹線、あす開業。道南・東北「商圏」に期待膨らむ

JR仙台駅でも開業にあわせたイベントを開催

 北海道新幹線が26日に開業する。1973年の計画決定から43年、北海道と本州が初めて新幹線で結ばれる。道南と北東北の新たな旅客流動の拡大といった沿線地域の開業効果への期待は大きい。

 北海道の道南地域に拠点を置く企業は、新幹線開業に対する期待が大きい。円滑なビジネス活動や、東北などへの商圏拡大につながるとみている。

 ITサービスを手がけるエスイーシー(函館市)は「東京での会議などで、新幹線の移動であれば、飛行機を使うより滞在時間が長くできる」(小野雅晴監査役)としている。

 制御機器などを製造するアサヒ(東京都江東区)は14年、函館市に進出。このほど函館市の工業団地に工場新設を決めた。生産体制を整え、「新幹線を使って函館から東北への営業に力を入れたい」(石本丈尚北海道事業部長)と話す。

 新幹線で北海道とつながる東北地域。東日本リサーチセンター(仙台市青葉区)が1月、仙台市民1000人の消費者モニターを対象に実施した「北海道新幹線に関する調査」によると、「利用したい」と「やや利用したい」と答えた市民は合計75%。高い利用意向がうかがえる。

 目的について90%以上の市民が「観光」と回答。「仕事」と答えたのは0・9%だった。仙台市に勤務する人には「興味がない」「関係がない」と冷ややかな声もある。市内で開かれる青森県や函館の物産展は盛況で、当面の効果は観光にとどまりそうだ。

 北関東などからの訪問者を増やしたい函館市と協力し、JR宇都宮駅(宇都宮市)への停車を熱心に訴えてきた佐藤栄一宇都宮市長は、24日の定例会見でも「昨年末の(停車見送り)決定は残念な思いで聞いた」と悔しさをにじませた。ただ、次のダイヤ改正をにらみ、停車の要請を続ける意向を強調した。

  一方、産業界の関係者は冷静な意見を口にする。出張などで栃木県から北海道に向かう場合、隣県の茨城空港や福島空港などを利用する「空路」が一般的だからだ。北海道へのアクセス性だけに限れば、宇都宮駅への停車が実現しても、効用は限られているとの見方が多い。

 JR大宮駅(さいたま市大宮区)では、構内の装飾に北海道新幹線のH5系車両に使われているラベンダー色を採用、開業ムードを盛り上げる。26日は下り1番列車の見送りと、上り1番列車を出迎えるイベントを行う。

 関東経済産業局の鍜治克彦局長は、新幹線の利用客の大幅増につながるのか、よく見る必要があるとした上で「北陸新幹線の開業時と同じく、心理的な距離感が短縮されたことでプラスの部分がある」と話す。

 また「地域間連携が今後、中長期的にプラスの効果が出てくることを期待する」としている。
日刊工業新聞2016年3月25日深層断面から抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
東京―新函館北斗間は最速4時間29分と大幅に短縮される。新幹線には「4時間の壁」という言葉がある。乗車時間が4時間を超えると、航空機に旅客が流れることを指す。北海道新幹線の東京―新函館北斗間の所要時間は最速4時間2分。北海道新幹線は貨物と共用する三線軌条で青函トンネル内での速度を制限していることから、この「4時間の壁」をわずか2分、越えられない。日本航空の植木社長は「所要時間からみても航空の優位性は高い。今のところ函館線の減便は考えていない」と、航空側の危機感はあまりない。

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