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「星新一賞」の一次審査を通過したAI小説家の実力は?

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「星新一賞」の一次審査を通過したAI小説家の実力は?

報告会の様子

 人工知能(AI)に小説を-。公立はこだて未来大学らが取り組んでいる「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」の作品が「星新一賞」の一次審査を通過した。

役割分担は人8割、AI2割


 作家の長谷敏司さんは「きちんとした小説になっていて驚いた」と評価した。ただ現状は研究者とAIの共作で、「役割分担は人間8割、AI2割」(公立はこだて未来大学松原仁教授、プロジェクト統括)。AIが単独で小説を書いたとは言いがたい。松原教授は「今後人間の負荷を減らせるよう研究を進めていく」という。

 プロジェクトでは小説の世界観や星新一らしさを作る研究と、物語の構造などストーリーを作る研究、文章生成の研究などのパートに分かれている。今回はAIでストーリーを作って人間が文章化した作品と、人間が登場人物やストーリーを設定してAIが文章を書いた作品をそれぞれ2点、合計4作品で応募した。詳細は非公開だが一作品以上が一次審査を通過した。

 AIでストーリー生成したチームは、心理ゲーム「人狼」をモデルに10人分のAIを用意して1万回対戦させ、この中で駆け引きが面白かった対戦をストーリーとして採用した。

作者「私が文章にするところで面白くなくなった」


 ストーリーの面白さは逆転劇などの要素を評価した。作品を手がけた東京大学の鳥海不二夫准教授は「私が文章にするところで、小説として面白くなくなった」と悔しがる。AI製のストーリーは計算機を回せば大量に生成でき、会話の駆け引きは推理やサバイバルものの基本要素だ。鳥海准教授は「次はミステリー作品に挑戦したい」と意気込む。

 文章をAIで生成した作品は、物語のオチや構成は人間が設定した。天気や登場人物の性格などを入力すると、設定に応じた文章ができあがる。登場人物がずぼらならば、部屋が散らかっている描写が入ったり、別の登場人物が服のコーディネートを話題にするといった具合だ。

 ただ会話文は人間が用意した組み合わせから選ぶなどの制約がある。名古屋大学の佐藤理史教授は「大枠を人間が設定したとはいえ、AIは数十万の物語を生成できる。創作をAIと人間のどちらがしたのか判断は難しい。AIが小説を書いたか、AIで小説を書いたか、読者の受け止め方次第だ」という。この小説家AIは2500字の文章を生成するために数万行のプログラムを書いている。

自由度が大きすぎるための難しさ


 速報記事やチャット文に比べて、小説を書くのは難しい。自由度が大きすぎるためだ。そもそも長い文章を破綻なく書くことがまだできていない。名大チームのように物語が破綻しないルールを人間が与える必要がある。
 
 また面白さや読み応えなどの評価が曖昧で、コンピューターで扱える指標になっていない。大量の文章を機械で生成しても絞り込んだり、機械学習することができない。

 一方、速報記事など文章のAI化は進んでいる。発表資料から事実を抽出して組み合わせれば、簡単な記事は構成できる。人間の書く記事をお手本にしたり、閲覧数を指標に機械学習もできる。シンプルで制約が大きい反面、ルールに落とし込みやすく実用化が進んでいる。

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明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
本というパッケージになった小説を買うとなると、どうしても作者の名前や顔がイメージされないと購買に結び付きにくいだろう。それよりも文中にあるゲーム、あるいはテレビのドラマの脚本とかは意外にいけるのではないか。最近「月9」の視聴率が悪いフジテレビさん、どうですか。

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