洗剤いらず、安全な洗浄技術「ウルトラファインバブル」の可能性

文= 寺坂宏一(慶応大学理工学部教授工学博士)

 洗剤未使用の洗浄技術としてウルトラファインバブルが注目されている。基本的な組成として空気と水からなるウルトラファインバブル水は安全で環境にやさしい新材料として期待できる。しかし、ウルトラファインバブルに関する科学的な理解が不十分であるため、実用化技術開発と並行して科学的現象解明が進められている。ウルトラファインバブル水による壁面洗浄技術の研究開発について紹介する。

 ウルトラファインバブルはかつてナノバブルと呼ばれていたが、国際標準化機構(ISO)によって1マイクロメートルより小さな泡の名称として定義された。

 図1に示したように身近で見られるミリバブルや白濁するマイクロバブルと異なり、ウルトラファインバブルは水中では無色透明である。また他の泡は水中で浮上していずれは水面で破裂するか溶解して消滅するが、ウルトラファインバブルは浮上せずブラウン運動によって拡散するのみである。

 ウルトラファインバブルは現在数種の生成法で製造されており、ウルトラファインバブルの用途によってガスと液および製法を適切に選択する必要がある。また肉眼で不可視であるため、レーザー光利用によるウルトラファインバブルに特化したサイズ分布や数密度(サンプル液ミリリットル当たりの個数)の測定法が開発され、評価指標として利用されている。

密封・輸送が可能


 ウルトラファインバブル水は、静置した密栓容器内に封入したときの数密度を数カ月以上にわたって安定に維持できる。常温または冷蔵庫内温度では差は見られないが、強い流動や振動、沸騰や凍結により減少する。

 これはウルトラファインバブル水がある穏やかな環境なら輸送や運搬に対する耐久性を持つことを示している。さらにウルトラファインバブル水の溶媒液添加による希釈も確認されているので、高数密度ウルトラファインバブル水を輸送し、現地で必要な数密度に希釈して使用が可能である。

 ウルトラファインバブル水は、高速道路サービスエリアのトイレ洗浄、橋に付着した塩分の除去、樹脂加工品の仕上げ洗浄など、さまざまな洗浄応用が実用段階に入っている。ウルトラファインバブル水は洗剤のように化学薬品を含まないため、すすぎが不要となりプロセスが単純化され、さらに洗浄廃水は環境にやさしい。

 ウルトラファインバブル水による壁面に付着した塩の洗浄のメカニズム解明および評価を検討した。ウルトラファインバブル水は一様な流速で斜面上のガラス板に付着させた固体食塩を洗浄しながら通過する。

 付着塩の洗浄率は電気伝導度センサーによる洗浄廃液中の塩濃度変化から正確に測定された。比較のためウルトラファインバブルを含まない水(ウルトラファインバブルフリー水)についても測定した。

 図2に付着塩とウルトラファインバブル水との接触による洗浄率の進行を示した。ガラス平板に物理的に付着した塩(A)は、ウルトラファインバブル水に接触して付着塩表面が徐々に溶解(B)する。

 次に付着塩の一部が次々に欠けるように剥離(C)して下流に流され、最後に平板上に残存した付着塩がウルトラファインバブル水で溶解(D)されて洗浄が完了するメカニズムであると高速度ビデオ撮影画像解析から明らかにされた。

日刊工業新聞2016年3月18日企画特集

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明 豊

明 豊
03月21日
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注目されるファイバブルの解説です。ナノレベルの細かい泡を発生させる装置を作る技術は日本以外にないと言われており、期待が大きい産業。

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