400年の伝統受け継ぎ「そっくりスイーツ」で日本一 虎屋本舗

文=虎屋本舗 高田信吾社長

 ふるさと祭り東京実行委員会が主催する「おみやげグランプリ 2016」でわが社の「日本風彩菓 てまり寿司」が1位を獲得した。見た目はお寿司だが、正真正銘の和菓子。精巧な出来栄えに審査員も驚いたらしい。驚いたのは私も同じで、まさか日本一になるとは思ってもみなかった。

かなった「日本一」


 約30年前、結婚披露宴で「私の夢は日本一のお菓子屋になること」と宣言した。その時は勢いで言ったのだが、心無い人たちからは「どうやって日本一になるんだ」と随分責められた。答えなんかあるわけがない。15代目の父ががんで倒れ、当時27歳だった私が東京で修業中の弟とともに家業を継ぎ、何もわからないまま経営を任された。しかしなぜか根拠のない自信だけはあった。

 2003年に開発した「たこ焼きにしか見えないシュークリーム」が大ヒットし、一躍全国区になった。その後、次々と「そっくりスイーツ」を商品化した。グランプリを受賞した作品もそうだが、これらは和菓子の世界で言う工芸菓子の技能の応用に加え、繊細、丁寧、綿密といった美意識を要する。伝統を受け継ぐとは技能もさることながら、精神も重要な要素だ。

 そっくりスイーツの商品ができるたびに「どうしてこのお菓子を作ろうと思ったのですか」と何度となく質問された。私はその都度こう答えた。「作ろうと思ってできたのではない。このお菓子は人を笑顔にし、人を幸せにする。そんな神がかり的な力を持っているから、お菓子の神様が私に託してくれたのだと思っている」。これは本心だ。

笑顔を次世代にも


 順調に見えるわが社にも危機は何度もあった。14代目の祖父は戦争ですべてを失った。焼け野原から再建を決めた理由はただ一つ。みんなが普通にお菓子を食べられるようになった時、日本が真に豊かになったといえる。その日を夢見てお菓子作りに尽力した、と。私も弟もこの意を受け継ぎ、さらに高い使命感で頑張っている。

 おかげさまであと4年で創業400年を迎える。今回の受賞であらためて思った。「お菓子には社会を豊かにする力がある。人を幸せにする力がある」。

 今、弟や息子と一緒に地元の小学校で菓子作りが体験できる出前授業を実施している。子どもたちの目の前でそっくりスイーツを作ると歓声が上がる。和菓子の作り方を教えて自分で作らせると、一様に「楽しい」と声を弾ませる。子どもたち、先生、私たちが笑顔になる瞬間だ。

 次の私の夢は「子どもたちに希望を与えられる日本一良い会社になること」。また責められそうだが、前回以上に根拠のない自信だけはある。

(広島県福山市曙町1の11の18)

【略歴】たかた・しんご 87年(昭62)国学院大経卒。アパレルメーカー勤務を経て、90年虎屋本舗入社、92年副社長、94年社長。広島県出身、52歳。

日刊工業新聞2016年3月14日 パーソン面

昆 梓紗

昆 梓紗
03月15日
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「てまり寿司」を見て、これは本当に和菓子なのか!と驚きました。老舗ながらも新たな挑戦をしつづけ、400年を重ねてきたのだとわかります。

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