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東北6県、固定価格買い取り制度の導入以降に再生エネ187万kw増える

ただ全国に比べ低水準、経済効果は?
 再生可能エネルギーで発電した電力の固定価格買い取り制度が2012年7月に始まり、東北6県で15年10月末までに出力187万キロワット分の再生エネ発電所が新規に稼働した。30%を占めた福島県には、関連産業が集積化する動きが出ている。日本海側では風力発電の建設ラッシュが起きそうだ。東北全体で再生エネ普及への機運が盛り上がっているが、専門家は「九州などに比べて導入が少ない」と指摘する。

 経済産業省の資料から集計した。制度開始前から運転する発電所も含めると原子力発電3基分に相当する300万キロワット規模の再生エネ発電所が東北にある。制度開始後、福島県には6県中一番多い57万キロワットが新規導入され、1基の出力が1000キロワットを超える大規模太陽光発電所(メガソーラー)は91基が運転中だ。14年には産業技術総合研究所が県内に再生エネの研究拠点を開設。奥地建産、カナメなど太陽光パネルの周辺機器メーカーも集積した。

 宮城県では太陽電池大手のソーラーフロンティアの新工場が稼働。青森県では国内最大の14万キロワットのメガソーラーが運転を開始。

 秋田県では制度開始後の風力発電の導入量が全国トップで、8万キロワットが運転を開始。計画中の風力も40万キロワットある。青森県にも57万キロワットの計画があり、順調に建設が進むと青森と秋田は風力の一大集積地になる。また秋田県では国内で20年ぶりとなる大規模地熱発電所の建設も始まった。

 山形県では県が新電力「やまがた新電力」を設立した。都道府県が出資する初の新電力だ。県内の再生エネ発電所から電力を調達し、4月から高校など県施設に販売する。

 エネルギー戦略研究所(東京都港区)所長で『日本海風力開発構想』の著書がある山家公雄氏は「自治体が大きな役割を果たしており、今後に期待ができる」と評価する。一方で「九州などに比べ再生エネの導入が少ない。系統運用や農林地・自然公園への設置規制が制約になっている」と指摘する。導入の勢いを止めないために、東北全体での政府への働きかけが必要だ。
日刊工業新聞2016年3月11日地域経済面
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
計算したものの、記事に盛り込まなかった数字があります。政府のコスト算定を使いながら東北への経済効果を試算してみました。すると太陽光、風力の新設工事で少なくても1650億円が投じられたようです。ただし、全国で再生エネ発電所は2454万kw新設されています。東北の158万kwは低水準で、地元への経済効果もまだまだ少ないと思われます。

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