教育から建設現場まで、独自eラーニングで市場開拓

地方創生を支える!注目のベンチャー企業 #7 トーキーシステム

 中小企業基盤整備機構のインキュベーション施設「岡山大インキュベータ」内に本社を置くトーキーシステム。学校向けeラーニングシステムやデジタルサイネージ(電子看板)向けシステムの開発メーカーである。

 IT端末の普及に従い市場には無数のアプリケーションソフトがあふれている。その中で、使いやすく拡張性に優れた同社製品への評価は高い。とりわけ主力のeラーニング向けシステム「eトーキーGL50」は電子黒板とタブレットを連動させるアプリで、一度に50人と双方向でやりとりできる。簡易な通信環境においても手書き情報や画面共有などの双方向のやり取りがストレスなくできるなど、アプリ操作におけるレスポンスの早さが評価され、教育の現場のみならず企業の会議用ツールや建設現場などで利用など広がっている。

刺激的なモットーの真意


 同社は「下請けは一切おことわり」というシステム開発業者としてはやや刺激的なモットーを掲げる。これは、ただ受注を増やし企業規模を大きくすることに価値をおくのではなく、世の中にないオリジナルの製品を積極的に提供し、新たな価値の創造につなげたいとする意欲の表れである。

 昨今、中国などへのアウトソーシングが増加し国内でのプログラマーの労働環境は苦しくなる一方だ。この状況下で、単純な下請け仕事を手がけず、独創的な製品開発を続ける同社の取り組みは異彩を放つ。ここには、もともと化成品メーカーの研究者であり理系のバックボーンを持つ技術者としての岡秀明社長の思いが大きくかかわっている。
 「技術は、1日では身につかない。積み重ねて強度を増していく。技術者が得意とする技術に特化して、それを磨き、お客様が使える製品に反映させ、それを自分たちで提案していく。この繰り返しがなければ、優秀な技術者は育たない」。この考え方には、産業界からの評価も高く、村川技術奨励賞やおかやまIT経営力大賞特別賞などたびたび表彰を受けている。

技術とデザインでITサービス起業へ


 起業は2009年。その頃岡社長は義父の跡を継ぎ岡山県で商業デザインの会社を経営していた。主力の企業パンフレットやHP制作業務は、顧客それぞれから細かな注文を聞き一品モノとして作り上げるのがほとんど。ビジネスとしての効率は決して高くはない。そこで、もっと生産性の高いビジネスモデルはないかと考えたという。
 様々な検討と試行錯誤の末、岡社長は、技術に明るい個人の強みと、デザイン会社の強みの両方が活かせるITサービスに目をつけた。ところが国内のITサービスには海外のような面白いものが見当たらない。おまけに新しいサービスが登場してもすぐにコピーが出回り、ビジネスとしての価値低下は早い。ユニークで寿命の長いサービスはないかと調べていたのだが、なかなか見つからないため、最終的には自社開発を行うことを決意する。

 社内外の優秀なプログラマーを集め、社内ベンチャーを立ち上げ、有限責任事業組合(LLP)としてスタートしたトーキーシステムが着手したのが、普及が始まったばかりのタブレットやスマートフォンを使った仕組みであった。これらの端末で実際に動作する複数のサンプルプログラムを制作し、東京・横浜・幕張とたった1年の間に4回も大きな展示会に出展することにした。
 その効果は大きく、実際に動くものがほとんど展示されていない状況の中で、実機で動作するものを展示できたことで、多くの企業からいろいろな提案を受けることができた。

 商品として初めに開発したのが教育システム「eトーキー」。展示会での反響があり、学習塾の採用やOEM(相手先ブランド生産)などの道が開けた。2012年には株式会社化し、大手企業との商談がしやすくなった。
 さらに同年、岡山大学病院の院内システム開発を通じて知った岡山大インキュベータへの入居も取引先拡大に役立った。対外的な信頼感が増したことに加え、インキュベータ側からはアドバイスや、岡大教育学部附属小・中学校の紹介をはじめ営業活動や各種補助金の申請、製品へのフィードバックなどさまざまなフォローが得られ、大きな財産となった。

 ビジネス戦略としての他社とのパートナーシップの組み方も秀逸だ。同社は未だ会社の規模こそ小さいが、各製品の用途分野においてトップランナーである大手企業や準大手企業とパートナーシップを組み、企業がもつ組織力や情報を活かして販売や共同開発を行っている。電子黒板等を製造販売する大手電器メーカーと共同体制を組んで展開しているタブレット連携学習支援システム「eトーキー」、オフィス家具・店舗用什器の大手メーカーと共同開発したデジタルサイネージシステム「@サイネージ」をはじめ、各種のOEM製品供給やITベンダーとしても活動を続けている。

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