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GEとNECに聞いてみよう!グローバルでBtoBブランディングを上手に展開する術

GEとNECに聞いてみよう!グローバルでBtoBブランディングを上手に展開する術

日本GEの清水氏(左)とNECの山室氏

 日本BtoB広告協会(東京都中央区、日枝久フジ・メディア・ホールディングス会長)は先日、「BtoBグローバルブランディング〜共通価値創造へのパースペクティブ」(日刊工業新聞社後援)を開催。グローバルコミュニケーションに取り組む先進事例として日本GEとNECの2社のキーマンの講演要旨を紹介する。

日本GE 清水智美さん「目的は勝つため」


<コーポレート・コミュニケーション本部マネージャー>

 日本GEのマーケティングチームが行っているのは、ターゲット層の心を揺さぶり行動を起こさせること。企業のブランディングを行う目的は、一言で言うと「勝つため」。企業の哲学、歴史、未来を体現するものであり、戦い方、顧客に提供する価値を示すものでもある。
 
 BツーB企業は、大規模にブランディング広告を打ち出すことはほとんどしない。社員一人一人がブランディングのかがみとして活動することになるため、自社のブランディングを周知させる社内啓蒙活動が大切なカギとなる。自社では創始者であるエジソンの電球の発明に始まり、各業界の常識を逸脱し、破壊しながら歴史を作ってきたことを繰り返し社員に伝えている。これはとても時間のかかることだ。
 
 戦略そのものをブランディングした例もある。2005年、各社がCSRとして取り組んでいた環境分野に「エコマジネーション」として参入した。

 当時は「環境を金もうけに使っている」との非難も浴びたが、ジェフリー・イメルトCEOは「環境分野は稼げる」と周知されれば研究開発投資が盛んに行われ、課題解決が進むと考えた。また09年には「ヘルシーマジネーション」と題して医療を世界中に安価に届ける取り組みを始めた。
 
 米国では高い知名度を持つが、日本でのGEの知名度はまだまだ低い。日本企業と同じくらい日本に対する熱い思いを持って取り組めば、日本市場で受け入れてもらえると信じている。スポンサー企業に名を連ねる東京オリンピックも、インフラ投資をすることでオリンピック後の日本の未来に貢献したいとの思いがある。

NEC 山室元史さん「先に英語のストーリー」


<コーポレートマーケティング本部ブランド戦略・IMCグループマネージャー>
 
 「オーケストレーティング・ア・ブライター・ワールド」というコーポレートブランドの開発を行った。15年度を初年度とする中期経営計画で掲げた「社会価値創造型企業への変革」の考え方にのっとって考案した。顧客や社会とオーケストラを奏でるように協業、協力して明るい世界を目指すという意味だ。
 
 以前のコーポレートブランドは10年以上使っていたにもかかわらず、言葉に込められた意味を知る社員がほとんどいなかった。社員の仕事を後押しするような身近なストーリー性の構築が不可欠だと考えた。
 
 今回のコーポレートブランドに添えられたストーリーは日本語よりも先に英語のものを作った。グローバル企業としてさらなる成長を目指すにあたり、日本を標準に考えるのではなく、世界の中でのNECを意識する必要があると判断したからだ。

 日本語を先に作っていたときには海外言語を用いる社員から「表現が難しい」との声が寄せられることが多かったが、今回はその問題も解消された。
 
 また、広告のキャッチコピーとは全く違うものだということを強く意識した。企業文化を変革するようなものにしなければならないと思った。研究所、営業、組合など幅広くインタビューやアンケートを実施し、社内の巻き込みを重視した。
 
 聴覚障害を持つ社員から要請を受け、パソコン通訳を用いてブランディングについての話をする機会があった。それをきっかけに育児休暇取得者の復職を支援するセミナーにも登壇した。すでに社内でダイバーシティーを体現する存在になりつつある。
ニュースイッチオリジナル
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
日本の大手企業のコーポレートコミュニケーション部門はグローバルのブランディングに腐心しているところが多い。特にGEやNECのように事業が多岐にわたっている場合は、コーポレートと事業部門、日本と海外拠点で意見の相違も出てくる。グローバルで圧倒的なGEがローカルの日本でやろうとしている取り組みはとても面白いし、逆にグローバルビジネスが弱いNECが「日本標準」を脱してようという試みも、GEと対照的で興味深い。

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