求む!情報セキュリティー人材―情報サービス各社、情報管理技能の向上急務

人材不足が深刻化

 高度化するサイバー攻撃により企業は、保有する情報を漏えいから守る対策に追われている。それを支援する情報サービス各社は、情報セキュリティー関連事業が活況だ。その一方、変幻自在のサイバー攻撃に対応できる専門人材の不足が深刻化している。情報処理推進機構(IPA)によると、より高度な技術を持つ人材は約8万人不足しているという。各社は頭を悩ませるが、教育システム見直しや産学連携による即戦力育成といった自衛策を打ち出す企業も出始めた。

人材育成で不足解消


 SCSKは企業のオンプレミス(自社保有)型の情報システム構築を行う約300人のシステムエンジニア(SE)を対象に、一般的なセキュリティー知識を学ばせる教育プログラムを開始した。

 SE自身がセキュリティー技術を身につけることで、人材不足を解消するとともに、単純に対策製品やサービスを売り込むだけでなく、システムやITサービスの管理・運用の一部と捉え、セキュリティー対策事業を展開していく考え。「顧客企業のセキュリティー要員になる」(渡辺篤史上席執行役員)というイメージだ。

 また、セキュリティー知識を習得したSEの約1割に当たる上位30人程度に、より専門的な技術を身に付けさせ、高度なセキュリティー人材の育成にも取り組む。

 「セキュリティーは重要分野だ」(高橋直也社長)という日立システムズも、東京情報大学と連携して人材不足解消を模索する。両者は2012年から、在学生を対象にセキュリティー人材育成に取り組んできた。

 企業で実際に発生したインシデント(事象)に対応するノウハウを活用し、演習形式のカリキュラムを採用している。今後は既存の講座内容を見直すほか、新規講座開設などにより教育内容を拡充させる。18年度までには就職後に”即戦力“となる300人規模のセキュリティー人材を育成する考えだ。

キャンペーンも展開


 業界団体も人材不足を懸念し、啓発活動への取り組みを活発化している。専門人材の不足を中長期で捉えれば、IT技術の国力低下に直結する恐れもある。IPAは人材の育成・確保を啓発するキャンペーンを政府などとともに3月18日まで展開する。

 政府はサイバー攻撃や重要情報の漏えい対策で効果を高めるにはITの技術面だけでなく人が介在する「情報管理」の技能向上が重要と位置づけている。IPAはキャンペーンで、こうした政府の意向を踏まえ16年度から実施する新国家試験「情報セキュリティマネジメント試験」の活用などを促している。

 これらをアニメ作品「攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX」を採用した普及啓発ポスターや専門サイトなどでアピールする。サイバー犯罪を題材とする同作品は国内外で支持されている。同作品の起用を通して、より確度の高い普及を期待する。

 企業が情報セキュリティー対策を重視する背景には、経営を左右する重要情報を電子化して保管するといった管理手法の変化がある。また、あらゆるモノをネットワークでつなげるモノのインターネット(IoT)の普及が進めば、センサーなどから得られる大量データの管理が必要になり、同時に情報流出のリスクも高まる。

だからこそ標的型サイバー攻撃は巧妙化し、多発している。その脅威は目に見えないだけに、顧客から安心や信頼を得られる存在になることが情報サービス各社の事業拡大に必須。その具現化に向け、専門人材の確保は焦眉の急だ。
(文=松沢紗枝)

日刊工業新聞2016年3月1日 電機・電子部品・情報・通信2面
日刊工業新聞電子版

昆 梓紗

昆 梓紗
03月02日
この記事のファシリテーター

記事中にもありますが、IoT社会が進みさまざまなモノがインターネットにつながれば、情報セキュリティー人材確保は今以上に重要事項になります。攻殻機動隊のサイバー犯罪への立ち向かい方は主に武闘なのですが、ITスキルを武器に戦う人材が増えればと思います。

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