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《中堅電子部品メーカーの生きる道#04》ヒロセ電機&NKKスイッチズ

《中堅電子部品メーカーの生きる道#04》ヒロセ電機&NKKスイッチズ

NKKスイッチズ大橋社長(左)とヒロセ電機・石井社長

**ヒロセ電機・石井和徳社長
―スマートフォン市場向けが不調です。
「停滞感はあるが、引き続き力を注ぐ分野。スマホ部品はウエアラブル機器や飛行ロボット(ドローン)など、次世代の機器に水平展開できる。モノのインターネット(IoT)もまだまだ変化の幅があり、一般消費者向け部品の市場は広がるとみている。開発の手を緩めず、時代の流れをつかみたい」

―自動車向けは各社とも好調です。
「自動車に運転支援システムの導入が進んでおり、部品メーカーの対応が必要になっている。製品開発は従来、高速・ハイパワーのニーズに応え進めている。日本は車そのものと、車を作るインフラ分野をリードしていると感じる。経済状況の先行きは見えづらいが、グローバルに種まきをする」

―ヒロセエレクトリックUSAをシカゴに移しました。
「グローバル市場を拡大する拠点として、シミバレーから移転した。良いモノをどのように届けるかが海外戦略の視点。地域性が必要なものは(現地生産を含め)地産地消体制を、その他についてはグローバルにと、両輪で進めている」

―ウェブサイト刷新の狙いは。
「近年、インターネット経由のビジネスが加速し、ウェブサイトで会社や製品を判断する顧客が増えている。この動向をつかんで拡販したい。16年はプライベートショーを開催しプロモーション活動も強化したい」

【記者の目/利益成長へ技術応用】
需要変動が大きく不安定なスマホ市場だが、同社は重点事業に位置づける。ウエアラブルやIoTなど、次世代分野へ技術をどう応用できるかが、利益成長のカギとなりそうだ。石井社長は「コミュニケーション力強化で製造部門と営業部門の連携機能を高める」とも話す。社内のモノづくり体制の基盤強化にも注目したい。
(南東京・門脇花梨)

NKKスイッチズ・大橋智成社長


―2017年3月期までの中期経営計画で、四つの販売強化項目を掲げています。
「インターネット販売、タッチパネル、多機能操作スイッチ(IS)、特定市場の4項目で販売強化を掲げた結果、16年3月期は各項目の売上高が前期を上回る見通しだ。製品をエンドユーザーに知ってもらうため、ネット販売の新しい仕組みを考えていきたい」

―フィリピンに建設した新工場が4月に稼働します。
「社員数20―30人でスタートする。まずスイッチを1シリーズのみ生産し、3年かけて日本や中国で生産しているスイッチをフィリピンに移管する。リスク管理の観点から進出したが、どの国で生産しても高品質な製品を供給していく」

―来期の新製品投入計画や市場開拓の方針を教えて下さい。
「来期は産業用スイッチを2―3製品投入する。次の事業の柱を目指すタッチパネルは、機能性を追求しつつバリエーションを増やす。また、日本は医療、北米は軍事、中国はインフラといった具合に国別の特定市場向け製品開発も強化する」

―現中計が来期で最終年度を迎えます。
「17年3月期に連結売上高100億円を掲げたが、先行きが不透明で計画達成は厳しい状況だ。来期の伸び率はスイッチ市場全体で前期比2―3%増と予想する。自社の販売強化項目は同20―30%伸びると見ており、同85億円程度を目指したいと考えている」

【記者の目/新たな販売方法模索】
同社は国内外に強固な代理店網を持ち、それが強みとなっている。その一方、ユーザーニーズを直接耳にする機会が少ないという課題がある。そこでニーズ調査にも役立つネット販売に力を入れつつある。景気の先行きが不透明なだけに、既存の販売網を生かしつつ、新マーケティングや販売方法の模索が求められる。
(文=南東京支局長・渡部敦)
日刊工業新聞2016年2月29日 電機・電子部品・情報・通信
尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
スマホ失速に象徴されるように、電子部品業界にも不景気風が吹き始めた。今回は2社ともに第3四半期の決算発表時に通期下方修正を余儀なくされている。ただ逆風下でも車載市場だけは例外のようで、いつ自動運転が実現するかはともかく、安全技術が高まれば高まるほど電子部品の需要は伸び続ける。車載市場への取り組み、食い込み方の濃淡によって、各社の業績の中身は結構異なっている。

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